夏休みも残りわずか。今回の「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」は元高校球児の東京・桑原幹久記者が“自由研究”として、宮城・山元町にある山元トレーニングセンター(トレセン)の坂路を駆け上がった。
同トレセンを利用する社台ファーム生産馬が今年春のG1を2勝。活躍の裏側を自らの足で探った。
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きつすぎる…。全長900メートルの坂路を上り終えると、全身から汗が噴き出した。心拍数はスタート前の80から160近くまで急上昇。山元トレセンの上水場長から「よく走り切りましたね」と声をかけられたが、息絶え絶えで、ろくに返事ができなかった。
スタートダッシュは決まった。だが200メートルほどにあるコーナーを曲がると、急勾配の直線を前に心をぽきっと折られた。体も即座に反応。急激に脚色が鈍った。「まだ体力がついていない馬も、あのコーナーで振られてうまく曲がれないんですよ」と同場長。登坂を嫌がる馬もいると聞くが、その気持ちは十二分に理解できた。
走破時計は6分24秒。競走馬は一般的なメニューの「15-15」、1ハロン=200メートルを15秒程度で走る。スピードに乗るまでの時間を考慮して、単純計算で1分10秒前後。白球を追った高校時代、盗塁のサインが1度しか出たことがない鈍足の31歳記者は、5倍以上時計がかかった。
場長いわく「時計が出るパンパンの良馬場」だった。早朝に行われる調教前には、ウッドチップを掘り起こす。適度に荒れを作って走りづらくし、負荷のかかりやすい状態にするそうだ。記者が走った午後の時点で馬の蹄跡(ていせき)はなく、平らにならされていた。野球部の練習で砂浜を走った際の感覚と比べると、チップからの反発が強く、無理なくスピードが出ると感じた。
20年に改修が行われ、全長は750メートルから900メートル、高低差は27メートルから33メートル、馬場はポリトラックからウッドチップに替わった。皐月賞馬ソールオリエンス、昨年の牝馬2冠スターズオンアースなど社台ファーム生産馬の活躍ぶりは記憶に新しい。スタッフの試行錯誤があってこそだが、躍進の一因である坂路を上った経験は非常に貴重で、この場を借りてご厚意に感謝したい。
今夏、栗東トレセンでは「夏休みトレセン親子体験ツアー」の一環として坂路体験が行われていた。今年は駆け込みで自由研究を片付けてしまった親子の皆さん、来年はぜひ坂路体験をお勧めします。【桑原幹久】
◆山元トレーニングセンター 宮城県南部の山元町に1992年(平4)開設。主に社台ファーム、追分ファーム生産馬の育成、調教を行う。面積43ヘクタール、東京ドーム約9個分の土地に約300頭(追分ファームを含む)を収容可能。主な施設は屋外1100メートルの周回コース、屋根付きウオーキングマシン20基、トレッドミル7基など。アグネスフライト、ネオユニヴァース、エイシンフラッシュと3頭のダービー馬を輩出。
(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)



