女性騎手の枠を超えて活躍する英国のホリー・ドイル騎手(26)が今週末から日本で騎乗します。

これまで欧州で5つのG1勝ちを含む重賞21勝。今年は軽量(52・5キロ)を生かして、2歳牝馬ザプラチナムクイーンで古馬混合のG1アベイドロンシャン賞を制し、J&T・ゴスデン厩舎の3歳牝馬ナシュワでG1ナッソーSとG1仏オークスを優勝。フランスのクラシックレースに勝った最初の女性騎手となりました。

デビューは17歳になった13年で、16年にはシーズン33勝を挙げて徐々に頭角を現し、3年前の19年には女性騎手にとって大きな壁であったシーズン100勝を突破。J・ゴスデン調教師が取り持って20年からは英国でブルーダイヤモンドスタッドを運営するクウェート出身の実業家I・アルサガール氏(ナシュワのオーナー)と優先騎乗契約を締結。これとともに英国騎手ランキングの常連となり、20年は2位(151勝)、21年は英国女性騎手のレコードを更新する172勝を挙げて3位、今年も2位(151勝)に躍進。ここ2年はトップ騎手の証しである年間1000回騎乗をクリアして、多方面から高い信頼を得ています。

騎乗スタイルは「冷静」かつ「豪胆」で、昨年の長距離王トゥルーシャンで臨んだ今月15日のG2英チャンピオンズロングディスタンスC(芝3190メートル)では、61・5キロを背負って、男性騎手(D・プロバート騎手)の乗るコルトレーンと最後の400メートルをびっしりと競り合って抜きつ抜かれつの末、頭差だけ抜け出して優勝。今年の英国重賞でも1、2を争う名勝負を演出しました。

その腕っ節の強さは秀でた女性騎手に使われる「男勝り」をはるかに超越するものです。今年3月には修業先のR・ハノン厩舎で同門だったT・マーカンド騎手と結婚、夫婦でありながらターフでしのぎを削る2人の英国人ジョッキーの活躍が楽しみです。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)