24日、中山最終レース終了後にオジュウチョウサン(牡11、和田正)の引退式が行われた。ラストランと発表されて挑んだ中山大障害は6着に敗れた。

それでも、冷えきった寒空のもと、1万5000人ものファンが居残り、最後の勇姿を温かく見守った。時折尻っぱねを見せるなど、激戦後の疲れを感じさせないタフさが何ともオジュウらしい。オーナーの長山尚義氏はファンに感謝の意を伝えた。「各レースとも印象深いですが(一番は)武豊騎手が乗った4年前の有馬記念です。世界の武さんがこの馬を選んでくれて感謝しています」。平地に活躍の場を広げ、グランプリまで駒を進めた前代未聞の挑戦を思い出に挙げた。

主戦の石神騎手はオジュウにまたがり、背中の感触をじっくりとかみしめた。担当として8年間苦楽を共にした長沼厩務員に口を取られ1人1人のファンの声援に応えた。スタンドからは「ありがとう」という言葉が絶えなかった。同厩務員は「とうとう来たなという気持ち。別れたくないですね」と涙ながらに相棒との別れを惜しみ、石神騎手も「悔しい気持ちですが無事ゴールできて良かったです。最高のパートナーでした」とねぎらった。

今後は種牡馬という第2の仕事が待っている。石神騎手は「子どもに乗れる可能性は0ではないので、願わくば競馬に乗ってみたい」と胸を弾ませた。J・G1・9勝、JRA賞最優秀障害馬4回。社会現象を起こし、ファンに勇気と希望を与えた走りは産駒たちに継承される。【井上力心】

▽和田正一郎師 私たちになかなかできない体験をさせてくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。オジュウの走りで感動や生きる希望を見いだしたという声も聞きましたし、本当に偉大な馬だなと思います。手掛けさせてもらい幸運でした。第2の人生が待っているので、今までどおり頑張ってもらいたいと思います。

◆オジュウチョウサン ▽父 ステイゴールド▽母 シャドウシルエット(シンボリクリスエス)▽牡11▽馬主 (株)チョウサン▽調教師 和田正一郎(美浦)▽生産者 坂東牧場(北海道平取町)▽戦績 40戦20勝(うち平地8戦2勝)▽総収得賞金 9億4137万7000円(うち平地2592万円)▽主な勝ち鞍 16~20年、22年中山グランドJ(J・G1)16、17、21年中山大障害(J・G1)16、17年東京ハイジャンプ(J・G2)17、19、20年阪神スプリングJ(J・G2)、16年東京ジャンプS(J・G3)▽馬名の由来 家族名より+冠名