今月末で定年、引退となる東西5人の調教師が最後の週末を迎える。名騎手としても知られた栗東・南井克巳調教師(70)もその1人。第1回JCダート優勝馬ウイングアローをはじめ、多くの重賞馬を手がけてきた。最後の重賞となる阪急杯(G3、芝1400メートル、26日=阪神、1着馬に高松宮記念優先出走権)にはメイショウケイメイ(牝7)がスタンバイ。土日の阪神、小倉に計14頭を送り出し、最後まで全力を尽くす。

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ラストウイークも南井師はいつも通り快活だった。よく通る声でスタッフと話し、笑顔でカメラマンのリクエストに応え、ポーズを取る。馬場入りする馬を見送り、調教を見守り、出迎える。最後まで全力を尽くす姿勢が伝わってきた。「もう思い残すことはない。さみしいけど、幸せに終われて良かった。幸せだもん、俺」と語る表情は、少しだけ感傷的に映った。

71年に騎手デビューし、JRA通算1527勝。うちG1は16勝。94年のナリタブライアンでの3冠など記録にも記憶にも残る名ジョッキーだった。00年3月に厩舎を開業し、調教師としてJRA通算5903戦446勝(重賞13勝、23日現在)。「15歳で馬事公苑に入った。55年もこの世界にいるね。競馬しか分からないから、つぶしがきかない」。引退間近でも“南井節”で周囲を笑わせた。

調教師としてJRA・G1は1勝。00年の第1回JCダートをウイングアローで制した。騎手時代に所属した工藤嘉見厩舎からの転厩馬だった。「工藤先生から引き継いだ。いろいろあったけど立て直して、ジャパンカップダートを勝つことができた。本当にいい馬に巡り会えた。調教師としてG1勝利を味わうことができて良かった」。

最後の重賞となる阪急杯にはメイショウケイメイを送り出す。この日の最終追いは坂路単走で4ハロン53秒8-12秒2と軽快に動いた。「3歳の頃は走っていた馬だからね。前走(北九州短距離S11着)も着差はわずか。はまれば。最後にいいレースをしてほしいね」と師。惜別の重賞制覇となるか。【網孝広】

〇…武豊騎手が引退調教師に向け、惜別コメントを送った。南井師とは騎手時代にオグリキャップとスーパークリークで熱戦を繰り広げたライバルでもあった。「優しいし面白いし、変わらないね。定年といわれてもピンとこない。元気だし見た目も若い」と話した。アドマイヤベガなどでG1を制した橋田師には「静かだけど、変に騎手にプレッシャーをかけたりしなかった。騎手の意見も割と尊重してくれた」と話した。