最後まで懸命にステッキを振るった。深夜の日本で画面越しに応援してくれるファンのために、全力でジョッキーを務めあげた。

福永祐一騎手(46)最後の騎乗となったリメイク(牡4、新谷)は3着。直前のサウジダービーもエコロアレス(牡3、森)で12着に敗れ、サウジ2鞍での有終Vとはならなかった。それでも、最後まで全力を尽くす騎乗スタイルを貫いた。福永騎手らしいラストライドで、27年の騎手生活に幕を下ろした。

常に自分の決めた道を突き進んだ27年間だった。デビュー当初は「ずっと乗れる保証はないし、とにかく勝ちたい」と常に結果を出すことにまい進してきた。順調に勝利を重ね、重賞、G1でも結果を残せるようになり「リーディングを取りたい」と思うように。そのためにとにかく自分を追い込んだ。

「今思えば、あの頃は自分らしくなかった。常にピリピリしていたと思うよ。話しかけるなっていう雰囲気を出してたかもね」

自分の性格には合わない行動にストレスを感じ、苦しんだ時期もある。しかし「やると決めたことはやる」。何かで1番になりたいと心に誓って入った騎手の世界。そうやって13年にはリーディングを獲得し、次のステージに向かった。

「楽しく仕事がしたいなと。馬ファーストで、常に馬のその後のことを考える。何より1頭1頭の馬生を大切に。それはある程度、任される信頼関係ができて、環境があるからできることだけどね」

かつての名トレーナー・藤沢和雄元調教師が貫いた「一勝より一生」を常に考えながら、騎手としてトップクラスの成績をずっと維持してきた。そして、ダービー3勝。コントレイルでは無敗の3冠を達成した。「やり残したことはない」。なに不自由ない騎手生活だったが、もっと馬のことを知りたい。福永スタイルを貫き、ステッキを置く決断をした。

これからは調教師として第2の人生を歩み始める。

「ワクワクしているよ。調教師としては成功していないし、たくさんの学びがある。自分のやりたいようにやっていくよ」

目を輝かせながら前を向き、ジョッキー福永祐一として、ラストライドを刻んだサウジアラビアを後にした。【藤本真育】