2番人気のジャックドール(牡5、藤岡)が、武豊騎手(54)の好リードで逃げ切り、待望のG1初勝利をつかんだ。勝ち時計はレースレコードの1分57秒4。好発を決めて先頭に立ち、最後に迫ってきた昨年の2冠牝馬スターズオンアース(牝4、高柳瑞)を鼻差でしのいだ。

54歳19日の武豊騎手はJRA・G1最年長勝利記録を樹立し、同通算80勝の節目を飾った。

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満開の桜が彩る仁川の舞台で、ジャックドールが花を咲かせた。好発を決めてハナに立つと、その後は魅惑の逃走劇。先頭の景色を1度も譲らなかった。

レジェンドとの息が合った。1、2コーナーで力みかけたが、鞍上がうまくなだめると馬もそれを理解した。自分のリズム、自分のペースでレースを作る。1000メートル通過タイムは58秒9とやや速めの平均ペース。それでも、逃げ切った。

「普通ならきつくなるペースで運んでいたし、ラストは向かい風がきつかったけど、よく我慢してくれた」と武豊騎手。手応えよく直線へ向くと、最内でしぶとく脚を伸ばした。外から2冠牝馬スターズオンアースが飛んできたが「足音が聞こえてきたのでヒヤヒヤしたが、ゴールした時はなんとか粘れたかなと」。わずかに出た鼻差で、念願のG1初制覇をつかんだ。

武豊騎手にとってはJRA・G1・80勝、G1最年長記録を更新する節目の勝利。「名馬にたくさん乗せてもらった。そのおかげ」とこれまでの相棒たちに感謝を伝える。今年も若手騎手のG1勝利が続くが、54歳になってもまだまだ先頭に立ち続ける。「若い子たちみんな頑張っている。でも俺が若い時はもっとすごかった、とハッパをかけているよ(笑い)。今のままでいいなんて思ってたらアカン」。それはきっと自分自身への言葉でもあるのだろう。飽くなき挑戦が、レジェンドをさらなる高みへ押し上げる。

藤岡師も「さすが武豊だな」と、名手の手綱さばきに感心した。厩舎としても、ジャックドールのイレ込みやすい性格を考慮。落ち着いてレースに臨める馬の引き方などを考え、練習を重ねてきた。間隔を空けて臨んだことも勝利へ結びついた。

タイトルを1つ手にした新たな“中距離王”が、大目標にするのは天皇賞・秋(G1、芝2000メートル、10月29日=東京)。5歳になり完成期を迎えた“逃亡者”が、また新たな世界を見る。【下村琴葉】

◆ジャックドール ▽父 モーリス▽母 ラヴァリーノ(アンブライドルズソング)▽牡5▽馬主 前原敏行▽調教師 藤岡健一(栗東)▽生産者 クラウン日高牧場(北海道日高町)▽戦績 14戦8勝(うち海外1戦0勝)▽総収得賞金 4億7204万2000円(同0円)▽主な勝ち鞍 22年金鯱賞(G2)札幌記念(G2)▽馬名の由来 人名より+黄金(仏)