競馬社会の内側に入って取材をしていると、つい馬そのものよりも、人間関係によってその馬を応援してしまうことがある。ナイスネイチャの担当厩務員だった馬場秀輝さんは、誰に対してもフレンドリーで話がおもしろかった。ナイスネイチャについても、いろいろなことを教えてくれた。

自然と馬場さんを通じてナイスネイチャを応援する記者が増えた。3歳(当時表記4歳)の秋、4連勝で菊花賞トライアルの京都新聞杯を勝った時はマスコミもすごく盛り上がっていたのを覚えている。

今年のサウジCを制したパンサラッサを担当する池田康宏厩務員(64)は当時、ナイスネイチャと同じ松永善晴厩舎に所属し、近くで同馬を見ていた。「僕は馬場ちゃんより年が1つ下で、ネイチャが勝つたびにいっぱいおごってもらったよ」。そんな馬場さんがナイスネイチャが引退した2年後、交通事故で亡くなった。同馬の熱心なファンの結婚式に出席した帰りだった。

馬場さんはとにかくナイスネイチャをかわいがっていた。「パンサラッサとは違い、おとなしくおっとりとした馬で本当、馬場ちゃんに懐いていた」と池田さんは振り返る。競走生活の終盤には、引き運動中に馬場さんが手綱を引かず手ぶらでも、じっと横を歩いていたほど。それほど信頼関係があった。

馬場さんは41歳の若さで天に召されたが、ナイスネイチャはみんなに愛されながら35歳まで長生きした。「今のネイチャの姿を見たら、喜ぶやろうな。感想を聞いてみたいな」。記者もまったく同感である。【中央競馬担当・岡本光男】