“未完の大器”レーベンスティール(牡3、田中博)が29日、ラジオNIKKEI賞(G3、芝1800メートル、7月2日=福島)へ向け最終追い切りを行った。体質の弱さから出世が遅れたが、無敗で皐月賞を制したソールオリエンスに新馬戦で首差の2着とした素質を秘める。初の輸送競馬を前に厩舎の通常パターンでメンバー唯一の木曜追い、先週日曜に続いての2頭併せを消化。現状では万全の態勢を整えた。

才能を隠しきれない。レーベンスティールは美浦ウッドでセイルオンセイラー(古馬3勝クラス)を追走。鞍上が目いっぱい手綱を抱えたまま、直線は内めを通り、5ハロン69秒4-11秒4で併入した。田中博師は「この馬の比較ではまずまずの体の状態」と及第点のジャッジも、キャリア全4戦で上がりメンバー最速を記録する抜群の瞬発力を光らせた。

素質の裏に危うさも潜む。初陣で皐月賞馬ソールオリエンスとたたき合いを繰り広げた。前走1勝クラスは2着に5馬身差の圧勝。2走ぶりにまたがる戸崎騎手も「パフォーマンスを見る限り(能力は)上位」と言い切る。ただ、腰の弱さから調教から加減が必要な状況。師は「問題がなかったことがないです。現状でもいいパフォーマンスをある程度しているのでもどかしさはあります」と“結果と将来”をてんびんにかけながら、現状のベストを探る。

だからこそ前出の師のジャッジは、及第点以上のトーンに映る。1週前の木曜は控えめに、日曜(25日)に2頭併せでいっぱいに追った(ウッド5ハロン66秒0-11秒3)。師は「先週末しっかりやれましたし余力もありそうなので」と、最終追い切りではレースまで間隔を取れる水曜ではなく厩舎通常の木曜を選択。単走ではなく、併せ馬で適度な負荷もかけて、万全の態勢を整えた。

母父はトウカイテイオー。1年の休養明けで有馬記念を制した“奇跡の名馬”の血を継ぐ。戸崎騎手も「初重賞ですが結果にこだわりたい」と力が入る。毎度波乱含みの3歳ハンデ重賞を、飛躍の秋へとつなげたい。【桑原幹久】

◆“福島男”戸崎騎手 戸崎騎手は昨年夏の福島で14勝を挙げ、2年連続5度目の開催リーディングを獲得した。当地重賞は通算23戦5勝、勝率21・7%を誇る。内訳は七夕賞を3勝(16年アルバートドック、17年ゼーヴィント、21年トーラスジェミニ)、ラジオNIKKEI賞を2勝(12年ファイナルフォーム、16年ゼーヴィント)。