3月のある日、木村厩舎で2歳馬取材(POG取材)をしているときのことです。「この馬のことを書くとき、“厩舎ゆかりの”とは書かないでいただけますか? きょうだいを預けていただいてますけど、決して、うちの厩舎ゆかりの血統ではないですから。これまでにいろいろな方が携わって、育ててきた血統なので」。木村師がイクイノックスの半妹ガルサブランカ(今日のベゴニア賞2着)を紹介するときに、そう言ったことを覚えています。
母シャトーブランシュは関西馬で、15年マーメイドSを制した重賞ウイナー。関東馬だった祖母ブランシェリーは芝で2勝、3代母メゾンブランシュは芝とダートで計5勝を挙げた馬でした。母の父は世界的な良血馬としてデビュー前から注目を浴び、00年高松宮記念を制したキングヘイロー。母のきょうだい、祖母のきょうだいなど、1頭、1頭に物語があります。木村厩舎に所属したイクイノックスの1歳上の半兄ヴァイスメテオールは3歳夏にラジオNIKKEI賞を勝って、将来を期待された馬でしたが、昨夏、調教中の事故で命を落としています。
「88年のキーンランド(米国)だね…。35年前か。“彼女”がいなければ始まらないストーリー」。自分が懇意にさせてもらっているブラッドストックエージェントの方が名前を挙げたのは、イクイノックスの4代母ブランシュレインでした。88年のキーンランド社ノベンバーセールで、ヒップナンバー(上場番号)は628番。お腹の中にはアレッジド(77、78年の凱旋門賞を連覇した名馬)の子を受胎していました。落札額は41万ドル。社台ファームの代理人が落札し、翌89年に生まれたのが、メゾンブランシュです。35年前に日本へ輸入された血統から世界最強馬が誕生しました。日本にはもっとはるか昔に輸入された牝系も残っていますし、新たに入ってくる牝系もあります。ブラッドスポーツである競馬の面白さ、奥深さを感じます。
月曜から天気に恵まれた1週間でしたが、今日は明け方、自宅を出るときにまさかの小雨。東京競馬場の空はずっと厚い雲が覆っていて、富士山の姿も見ることはできませんでした。ただ、芝コースのコンディションは素晴らしかったと思います。多くのファンが駆けつけ、場内には熱気が充満していました。レースは…とにかく、○パンサラッサの逃げに感動しました。普通のG1は道中で歓声が小さくなる瞬間が必ずどこかであると思うんですけど、スタートからゴールまで、そんな瞬間はまったくなかったのでは…。ずっとどよめいている、そんなレースでした。2023年の競馬で世界一、世界最高、ベストレースと言っていいと思います(自分調べ)。
私の狙った◎タイトルホルダーは5着。▲イクイノックスに完璧に目標にされる厳しい展開になりましたが、頑張ってくれました。上位馬に脱帽です。
今年の東京開催最終日が終了。来週から関東は中山が舞台です。体調管理をしっかりしながら、競馬を楽しんでいきましょう。【木南友輔】

