2歳女王を決める阪神JF(G1、芝1600メートル、10日)の最終追い切りが6日、東西トレセンで行われた。有力馬の調教を深掘りする「追い切りの番人」は京王杯2歳S快勝から挑むコラソンビート(加藤士)を木南友輔記者が取り上げる。美浦ウッドを単走で好時計。“出ちゃうんですよ”の言葉に記者も同感だ。

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「うーん、軽いなあ…」。記者が抱いた第一印象はゴールを過ぎた直後、表示された時計に間違いだったことを思い知らされる。美浦のウッドチップコースを単走、馬なりのまま、コラソンビートが計時したのは5ハロン66秒4-ラスト11秒4の数字。「えっ、こんなに出てるの?」。“見た目(あるいは乗り手の感覚)以上に速い時計が出ている”。サラブレッドの好調のバロメーターとして、よく使われる言葉だが…。

「そう。(時計が)出ちゃうんですよ。だから、能力を開放しすぎないように。今日は完璧だったかな、と思います。まだギアがグンと上がるんですけど、そこまで上げないように気を付けながら。前走よりも状態はいいと思います」。加藤士師は笑顔で、動きと時計の評価を教えてくれた。

実は3連勝を飾った京王杯2歳Sはベストの調整過程ではなかった。若手騎手を乗せた1週前追い切りの併せ馬が6ハロン78秒1-5ハロン63秒0-ラスト12秒1という予定外のオーバーワーク。感覚以上に速い時計が出てしまったのだろう。予期せぬ時計の一方で、ケガの功名というか、大きな収穫があった。「追い切った後に獣医に診てもらったら、『本当に追い切りやったの? 追い切った後の心臓の音じゃない』って。心肺機能がすごいし、調教をしっかりやった後の方がカイバもよく食べる。賢い馬なんですよね」。

今回は1週前追い切りに横山武騎手を乗せ、3頭併せで好感触をつかんでもらっている。最終追い切りは助手を背に単走で好時計。「すごくいい追い切りができました」と師も胸を張る。「活躍する馬って、変わってくるし、日々成長するものだと思ってます。他の馬たちも成長してるし、1勝馬も怖い存在ですが、この馬にも負けない成長力があると思う。G1は出るだけで大変なこと。勝てるなら勝ちたい。勝てるとは言えないですけど、絶対にいい競馬をしてくれると信じてます」。追い切りの数字、取材の感触から絶好の仕上がりとみて良さそうだ。【木南友輔】

◆3勝以上馬の制覇 今年はコラソンビートがメンバー唯一の3勝馬で、未勝利→ダリア賞→京王杯2歳Sと3連勝中だ。阪神JFが牝馬限定となった91年以降、レースまでに3勝以上していた馬の成績は【4 1 1 16】。91年ニシノフラワー、96年メジロドーベル、02年ピースオブワールド、20年ソダシが優勝している。