今年も中東から日本馬の快進撃が始まりそうです。来週末はカタールのドーハで国際競走デーがあり、再来週はサウジアラビアのリヤドでサウジカップデー、そして、来月末はアラブ首長国連邦のドバイでドバイワールドカップデー。高額賞金ですし、招待競走なので、招待を受けることがまず大事。自然と、ハイレベルなメンバーのレースになります。

自分はサウジアラビアへ取材に行く予定。第1回のサウジC取材以来、4年ぶり2度目になります。G1格付けになり、今年からは日本国内で馬券発売もされるので、注目度もさらに上がることになりそうです。

個人的に楽しみにしている、応援したいと思っているのが、奥村武厩舎のノースブリッジのカタール遠征です(※こちらのレースは馬券発売はありません)。サッカーのアジアカップが行われているカタールのドーハ。カタールと言えば、フランスの凱旋門賞のスポンサーになっている国ということで、ご存じのファンも多いと思います。

自分がカタールの競馬を取材に行ったのは、2014年の2月。ちょうど10年前の開催でした(有休を使って、2泊5日の日程で…)。ジョッキーはオリビエ・ペリエ、当時はまだ日本に移籍する前だったクリストフ・ルメール、英国で売り出し中の若手だったハリー・ベントレー(現在は香港に在籍)が活躍していて、そこにフランキー・デットーリがスポット参戦…、そんな華やかな開催でした。小さなスタンドにはカタールの競馬を視察に訪れていた欧州のビッグネームがズラリ。マイケル・スタウト、ジョン・ゴスデンがいました。まだ、サッカーのワールドカップが行われる前。ドーハの街中は開発途上でした。「ドーハの悲劇」の舞台となったスタジアムも見てきました。

自分が行った翌年、15年の開催を視察に行ったのが、奥村武師。当時は日本とカタールの検疫の条件が整っていないため、日本馬はまだカタールに遠征することができない状況でしたが、「いつかカタールに遠征する日が来るかもしれないから」と…。競馬への探究心にあふれ、先見の明があったのだと思います。

その後、検疫の環境が整備され、日本馬も遠征できるようになりました。19年には森厩舎がカタールへ遠征しています。じつは18年の年明け、奥村武師にはカタール遠征を本気で検討していた馬がいました。それがテンクウという馬で、井山登オーナーの所有馬でした。2歳の6月に東京で新馬戦を勝って、新潟2歳S3着、サウジアラビアRC4着。年明けのジュニアCを勝って、カタールの重賞も選択肢に入れていましたが、当時は実現しませんでした。

今回、テンクウの井山登オーナーの所有馬ノースブリッジでカタール遠征が実現します。行き当たりばったりの海外遠征ではなく、何年も前からその可能性を感じ、陣営が胸に秘めていた遠征です。鞍上には師が全幅の信頼を置く岩田康騎手。ロードカナロアで香港スプリントを連覇し、デルタブルースでメルボルンCの勝利をつかんだ勝負師がドーハ・アルライヤン競馬場のターフでノースブリッジの能力を引き出してくれると思います。

今日(木曜)の美浦トレセンの投票所、前日に栗東でノースブリッジの追い切りを見てきた奥村武師に話を聞きました。ここまで順調に来ている様子です。「いい結果を出して、次のレースに向かえれば」。金曜に出発し、来週土曜の本番に備えます。レースが行われるのは日本時間のフェブラリーS前夜です。サウジ、ドバイの前にまずはカタール。ノースブリッジ、ゼッフィーロ、サトノグランツ、日本馬の活躍に期待したいと思います。【木南友輔】