香港のビクターザウィナー(せん6、C・シャム)が高松宮記念に参戦する意欲を見せたのは前走センテナリースプリントC(1月28日)のレース直後に行われたシャム師の会見だった。日刊スポーツ電子版では「香港のG1馬ビクターザウィナーが高松宮記念に登録へ シャム師『日本行きをずっと考えていた』」というタイトルの記事を掲載している。当時は「彼の状態を見て」という条件付きだったが、現実に来日したのだから、状態面がいいのは間違いないだろう。

シャム師は2度目の日本遠征になる。前回は12年のスプリンターズSにリトルブリッジで参戦し、勝ったロードカナロアから0秒7差の10着に敗れている。同馬は香港でG1制覇の経験がなかったものの、同年6月に英国に遠征し、ロイヤルアスコット開催のG1キングズスタンドSを勝利。シーズン初戦として、矛先を向けたのが日本のスプリンターズSだった。今回のビクターザウィナーはG1を勝利し、香港競馬のシーズン真っ最中の遠征だから本気度が違う。センテナリースプリントCは香港競馬の「スピードシリーズ」と銘打たれた短距離G1シリーズの初戦。10日に行われた第2戦のクイーンズシルバージュビリーCに向かわず、あえて日本遠征に踏み切ってきた。勝算は間違いなくある。

勝算とともに、期待したくなるのがシャム師の経験値だ。リトルブリッジでロイヤルアスコットのG1を制しただけでなく、昨秋は中距離路線の最強馬ロマンチックウォリアーでオーストラリアの中距離最強を決めるコックスプレートで歴史的な勝利を挙げた。強調できるのは管理馬の勝利だけでなく、助手時代にも海外遠征で結果を出していること。調教助手時代に師事していたのはアイヴァン・アラン調教師。オールドファンには懐かしいオリエンタルエクスプレス(98年安田記念で8番人気2着)、インディジェナス(99年ジャパンCでスペシャルウィーク、モンジュー相手に12番人気2着)など、“馬券になる香港馬”を印象づけた名トレーナーだ。

24年前、00年6月2日付の日刊スポーツ紙面には安田記念に挑むフェアリーキングプローンの写真、「ナイス『外』 初の左回りスムーズ」の見出し、追い切りにまたがった「D・シャム攻め馬手」の談話などが掲載されている。今回のJRAの表記は「チャップシン・シャム」だが、当時の表記は「ダニー・シャム・チョップ・シング攻め馬手」だった。00年安田記念のフェアリーキングプローン(10番人気)。香港のアラン厩舎が唯一、日本で挙げた勝利、そこに深く関わっていたのが、シャム師だった。

今週の会見ではロマンチックウォリアーの安田記念遠征も引き続き選択肢にあることを話したシャム師。今回のビクターザウィナーは安田記念前の「下見ではないか」という声も聞こえてくるが…。短距離王国・香港から一流スプリンターが高松宮記念に参戦。参戦までの過程から浮かび上がる勝算、トレーナー自身の経験値を考えれば、ビクターザウィナーのあっさりがあっても驚けない。【海外競馬取材班】