「歩く百科事典」と呼ばれた博物学者・南方熊楠が3年間滞在したという大阪屋旅館跡を過ぎると、夫婦杉が仲良く立ち並び、道にいざなわれる。大門坂の入口だ。


夫婦杉が大門坂の入口
夫婦杉が大門坂の入口

8メートル以上の幹回り、50メートル以上の高さを誇り、推定樹齢は800年。歴史あふれる夫婦杉をくぐると、すぐに石畳の石段が始まる。厳かな気持ちで歩を進める。ここも世界遺産、熊野古道。高い杉並木の中を、少しずつ聖地・熊野那智大社へ近づいていく。日光が強弱をつけ、ところどころで差し込んでくるのが神秘的だ。


心を清らかに保ちながらも、足に疲労はたまっていく。未確認情報ながら「那智大社まではかなりの時間を歩く」との噂も聞いていた。長い上り坂が現れた。歩くのは大変だけれど、印象深いビジュアルだ。昔の人々はどんな思いで、この石段1つ1つを踏みしめていたのだろう。思いや願いをそれぞれにもって那智を訪れたはずだ。


熊野那智大社へ続く大門坂を歩く
熊野那智大社へ続く大門坂を歩く

序盤を飛ばそうとかなりのペースで歩いた。すると、杉並木が終わった。あれ? 夫婦杉をくぐってから10分少々。1時間近い階段上りを覚悟した大門坂、たったの10分であっさり終了であった。267段、約600メートルだそう。拍子抜けだったが、大門坂以降のほうが階段の傾斜はきつい。杖を突いて歩いている人が多く、うらやましい。


熊野那智大社へは急な階段の連続
熊野那智大社へは急な階段の連続

やがて、一番高い場所にある那智大社への参拝を終えると、その先に絶景が待っている。那智の滝である。那智大社に隣接する青岸渡寺の赤い三重塔が、景観のいいアクセント。「和の絶景」として定番の組み合わせながら、おごそかな空気に包まれる場所だ。


青岸渡寺の三重塔と那智の滝
青岸渡寺の三重塔と那智の滝

坂を歩いて下っていくと、那智の滝のそばまで寄ることができる。古くから人々の畏敬を集めてきた那智の滝は、落差日本一(133メートル)の名瀑だ。三筋に分かれて熊野の山から流れ落ちる滝は、栃木・華厳の滝などと並んで日本三大名瀑の1つ。「華厳の滝など」と書いたが、残るもう1つは諸説ある。一応、袋田の滝(茨城)が有力のようだ。


日本三大瀑布の1つ、和歌山・那智の滝
日本三大瀑布の1つ、和歌山・那智の滝

大門坂を歩き、那智大社に参拝し、那智の滝を目撃する。心を浄める貴重な時間なのだが、私はここには縁が薄かったのだろうか。ふもとから選挙カーの演説の声が響き続ける。何も、こんな厳かな観光地近くまで来なくてもいいのに…。雰囲気、台無し。こういうセンスのない人は、政治家に向いていないとつくづく思う。【金子真仁】


滝壺近くは虹色に輝いていた
滝壺近くは虹色に輝いていた

「大門坂・熊野那智大社」へ行くには?

わずかながら駐車場もあるので、車で那智大社付近まで上ることもできます。可能であれば、せっかくならば大門坂を歩いて参拝するのがオススメです。大門坂駐車場(和歌山県那智勝浦町市野々3034-2)は100台駐車可能。ここから県道に沿って少し歩くと、大門坂入口があります。大門坂駐車場にはバス停もあり、例えば帰路は那智大社からバスに乗って戻ることも可能。JR勝浦駅からもバスで約20分で、この拠点となる大門坂駐車場まで行くことができます。


Wonderful View No.132 “Approach to the Kumano Nachi shrine”

The Kumano-Nachi shrine is one of the most famous Shinto shrines in western Japan. The stairs of a stone to the shrine have a special atmosphere, and they are known as a superb view place. It is called Daimon-zaka slope. Nachi also has the tallest waterfall in Japan.


[DATA]

Address: 3034-2, Ichinono, Nachikatsuura-cho, Wakayama-ken

Access: About 20 minutes by car from central Nachi-Katsuura

Parking: For about 100 cars