小山酒造店/上越市
杜氏を務める小山伸一社長。名刺の肩書きは「代表社員」

 信越本線の土底浜駅。改札のない無人駅のホームには潮風がストレートに吹き込んでくる。ここから国道8号を渡り、さらに海へ向かってほどなくすると小山酒造店に着く。蔵の周囲にある松林の向こうは日本海。近くには鵜の浜温泉海水浴場や大潟キャンプ場がある風光明媚(めいび)な場所だ。「越後自慢」と「潟の井」を代表銘柄とする小山酒造店だが、今回の1本「純米吟醸 松風酔月」は、江戸時代から続く酒蔵の土地の魅力を託した別の銘柄になる。蔵で2種類のみの純米酒の1つで、唯一の純米吟醸酒でもある。酒米「五百万石」がもつ、うまみときれいな味わいのバランスのよさを生かした1本だ。

 この蔵の杜氏は小山伸一社長。先代のベテラン杜氏から、これから小さな酒蔵が生き残っていくためには経営者自らが酒造りをすべきとのアドバイスを受け、東京農業大学で学んだ基礎と、実践の現場での体験をもとに、この蔵の酒造りを担うことに。新潟県内でも上越地域の地酒はうま口や甘口が多い傾向にあるが、小山酒造店では「うちはこの地域では珍しいのですが、辛口の酒を信条としています」と断言する。すっきりとした後味の食中酒を目指している。

 さらに酒造りのすべての工程を手作業で行うため、搾る段階でも、もろみを袋に詰めて圧搾機に並べて搾る昔ながらの袋搾りを採用。普通酒やカップ酒の「潟の井」も手搾りというのだから、飲み手にとってはこの上なくぜいたくな酒だ。

 毎年10月下旬に上越市の高田商店街で開催される「越後・謙信SAKEまつり」では、通常は2月から初夏限定販売の希少な「にごり酒 越後自慢」も販売。この酒を目当てに訪れるファンも多いという。今年の開催は10月21日(土)22日(日)。蔵人との会話と手作りの味わいを楽しみに出かけてみよう。【高橋真理子】

[2017年9月2日付 日刊スポーツ新潟版掲載]