長く取材を続けるなかで中西太ほど外国人操縦術にたけた指導者はいない。彼と現場で接した監督、コーチ、フロントに否定するものはいないだろう。

例えば日本で成功を収めた最高傑作の一人が元近鉄ラルフ・ブライアント。88年近鉄ヘッドコーチの中西は、中日2軍で埋もれる外国人を見初めて金銭トレードで獲得した。

当たれば飛ぶが、空振りのほうが目立った。「打撃は力じゃない。タイミングだ」。自ら打撃投手を務めるのが中西のスタイルで緩急つけて投げ分けた。

実戦で三振すると、赤面して戻ってくるブライアントに「大丈夫。お前の長所は振ることだから」と逆に持ち上げるのだった。

「正直、見た目はどうしようもなかったが、あのパワーは魅力的だった。いけると読んだ。ただし中途半端な空振りはするなといったんだ。日本では初球からフォークボールを投げてくる。大事なことはいいスイングをすることだ」

独自のティーボールの上げ方は命がけの天下一品だった。ブライアントは“中西流”の調教によって、在籍8年で本塁打王3回、打点王1回のタイトルホルダーに育った。

「本人も死に物狂いだったからね。主に左打者の外に投げてレベルで打たせる。おそらく多くはブライアントはアッパースイングだと思うだろうが、ボールをとらえて手首を返すから、そう見える。コーチの辛抱は大事だわな。あとは通訳もね」

かつて阪神監督だった中西は「今年は面白いね」といった。「みんな浜風、浜風って、風は関係ない。シンでとらえれば飛ぶんだ。掛布だってそうだろ。外角の球をしっかり打たせた結果だよ」。名伯楽の自信がにじむ。

「外国人も枠を考えれば余ってくるが、うまく休ませながら起用することだね。4番は外国人になるだろう。理屈じゃダメ。ちゃんと手助けしてやることだね。でも、ただ打線のキーは糸井とみとるんだよ。福留とベテランの二人だな」

阪神の前評判が良いのは毎度のことだが、得点力アップをもくろむ「20年型オーダー」は開幕ダッシュの成否にかかってくる。

「糸井の2番も面白いよね。近本との1、2番。もしくは近本が2番というなら、本塁打よりアベレージを稼ぐ糸井がトップバッターでもいい。その前提になる外国人がはまればチャンスありだよ」

西鉄、日本ハム、阪神3球団監督を含む、実に9チームで指導者に就いた。球界のレジェンドは古巣の躍進に期待を寄せる。(敬称略)