捕手の心構えとして「投手を、打者1人でも多く1イニングでも多く投げさせる」と教わってきた。巨人大城はこの部分が足りていなかった。

6回2死一塁。中井を1-2と追い込んだ。2球目までの外角直球に反応せずに見逃し、外角低めのボール球のチェンジアップを見送った形からは内角の、かつ変化球への意識が強いことが感じられた。だが続く内角へのスライダーを右前に運ばれ、先発メルセデスは降板に追い込まれた。後続は断ったが、観察不足による「あと1死」が盤石ではない救援陣にしわ寄せとなり、後に流れを変えた。

8回2死満塁でのオースティンへの初球は、低めへのチェンジアップで空振りを誘う。直球待ちの傾向が強い打者に対し、チェンジアップを続けたのは間違っていない。だが初球が最高の球だっただけにジェスチャーで、構えで、より低く、ボール1つ分さらに外す狙いを高木に伝えないといけない。その意識付けも感じられず、高めに浮いたところを逆転打された。

捕手は「投手も意図を分かっているだろう」と思いがちで、私もそういう時もあった。だが「投手のことを信頼しても、信用しすぎてはいけない」が捕手としての戒めだ。仲間へのリスペクトは必要だが「分かっているはず」という思い込みに近い信用は痛い目にあう。

信頼でいえば、巨人沢村も考えを改めなければいけない。8回から登板し、先頭に四球を与え、次の打者はいい球で三振を奪って持ち直したと思えば、また四球で降板した。制球が乱れる課題も、年数や抑えを務めたこともあるキャリアからすれば、いいかげんに原因が分からないといけない。いい時はとんでもなくいいが、投げてみないと分からない。ベンチは選手を信頼して送り出しているが、こういう投球では信頼を失ってしまう。(日刊スポーツ評論家)

巨人対DeNA 8回表DeNA2死満塁、オースティンは右翼へ3点適時三塁打を放つ。投手高木(撮影・山崎安昭)
巨人対DeNA 8回表DeNA2死満塁、オースティンは右翼へ3点適時三塁打を放つ。投手高木(撮影・山崎安昭)