楽天田中将は背伸びをせず、高望みをしない、さすがの投球だった。初回の投球が物語っている。先頭の若林に3球連続でスライダー。3者凡退の勝負球もスライダー、スプリットの変化球で、13球中で直球は3球だけだった。

前回登板の17日の日本ハム戦は復帰戦で力みもあったのだろう。初回から力を込めた直球は高めに抜けた。力勝負に行った中田に真ん中高めの直球で1発を浴びた。だが、この日の初回は冷静だった。故障した右ふくらはぎの影響もあるのか直球が本調子ではない。だからこそ直球を選択しても7、8割ぐらいの力感でしか投げていなかった。1点を失った直後の3回1死二塁も若林、源田と一転して直球中心に攻めたが、ギアを上げたようには感じなかった。打線が2巡目に入り、配球をガラリと変えたのだろう。ギアを上げない、というより今の状態ではギアを上げられないのではないか。

それでも抑えられる術を持っている。普通の投手は左右の揺さぶり、高低、空間の中でタイミングを外す、と3点のいずれかを武器とするが、田中将はすべてを備えている。直球、ツーシームにしても、普通のリリースポイントで投げたり、下半身で粘りながら球持ちを長く前でリリースしたり、わずかの差で打者との間合いを外しにかかる。

メジャー挑戦を経て、フォームも無駄がそぎ落とされている。以前の方が躍動感があるように映るかもしれないが、今の方がよりシンプル。メジャーから日本に戻った元広島の黒田も同じだった。だからこそ、バランス良く投げられ、直球がいまひとつでも6回68球でまとめられるのだろう。まだ打者も変化球に重点を置いて狙えるため呉念庭、源田に拾われていた。だが登板を重ねて直球が戻ってきた時に、新たなマー君の姿が見られると思う。(日刊スポーツ評論家)

楽天対西武 力投する楽天先発の田中将(撮影・山崎安昭)
楽天対西武 力投する楽天先発の田中将(撮影・山崎安昭)