ドジャース大谷翔平投手(30)がメジャー史上6人目の40本塁打40盗塁を達成した。盗塁王2度獲得の緒方耕一氏(55=日刊スポーツ評論家)が大谷の盗塁について語った。

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メジャー史上、5人しか達成していなかった「40-40」を8月下旬にクリア。昨年までは負担の大きい「二刀流」で盲点になっていたが、大谷の身体能力を考えると盗塁数の大幅アップは十分に考えられたと思う。開幕当初から盗塁に積極的だったが「今年は投手をやらないから、積極的に盗塁を狙っているんだろう」というぐらいに思っていた。しかし大谷の“本気度”は、常識の範疇を上回っていた。

今季の盗塁数の成功と失敗の推移を月別に見てみるとよく分かる。

月別 成功 失敗

3月 1個 0個

4月 4個 0個

5月 8個 0個

6月 3個 2個

7月 12個 2個

8月 12個 0個

開幕当初から5月までで13盗塁しているが、失敗は0。ピッチクロック導入前の21年は26盗塁しており、ノーマークではなかっただろう。しかし4月の4個から5月には8個に倍増。ノーマークではなかったが、走って行く中でスタートを切るタイミングをつかんでいったのだと思う。

そして6月は3個に減り、失敗を2個。けん制球が直撃したことをきっかけに5月中旬から下旬にかけて悪化した左太もも裏痛や、相手チームが盗塁を警戒するようになり、盗塁数も減り失敗が増えた。本来ならここで積極的に走るのを自重するものだが、大谷は違った。7月は12盗塁し、失敗も2個。8月も12盗塁し、失敗は0。完全に盗塁するコツをつかんだのだと思う。

盗塁には「走る勇気」が必要で、走っていくうちにドンドンうまくなっていくもの。大谷も開幕当初はスピードに頼った走りだったが、ここにきて“滑らかさ”が出ている。盗塁はいいスタートが切れないと、どうしてもスタートの遅れを取り戻そうとして力み、足に力が入りすぎてしまう。

しかし7月以降の大谷の走りを見ると、スムーズに足が出て加速している。ピッチャーがけん制するタイミングを予測するなど、スタートを切るタイミングのコツをつかみ、いいスタートを切っているからだと予測できる。

日本球界にいた頃の大谷のシーズン最多盗塁は7個で、メジャー移籍してからもエンゼルス時代の21年の26個が最多で、失敗は10個だった。昨年はメジャー全体で盗塁数が急増したピッチクロックが導入されたが、大谷の盗塁数は20個(失敗6)。右肘手術の影響で投手ができない今季は、明らかに盗塁する意識を強く持ち、大幅アップを狙っていたのだと思う。

ここで大谷の盗塁技術を解説しておきたい。盗塁を狙う選手として、リードはそれほど大きくない。素晴らしいのはスタートを切るための姿勢で、背筋がスッと伸びている。盗塁を狙うと、どうしても前傾姿勢が深くなりやすく、そうなると横を向いてリードを取っている体勢からセカンドベースへ方向転換する際、力んでしまうし、余計な動きが生じてタイムロスしてしまう。前傾姿勢になりすぎず、背筋が伸びている大谷のスタートを切る構えは、理想的だといっていい。

そしてスタートを切るときは、右足を後ろ側に引いて動き出している。スタンス幅が広い選手にありがちで、右足を引くことにより左足に重心を乗せ、二塁ベースに向かう爆発力を高める効果がある。ちなみにスタンス幅が狭い選手は右足のつま先を二塁ベースに向くようにしたり、二塁ベースに向かってステップしている。自分の合ったスタートでいいと思う。

残るは前人未到の「50-50」。盗塁を増やすには本人の意欲が大事で、今の大谷にモチベーションの問題はないだろう。盗塁の技術を見る限り、50盗塁はクリアできると思う。問題は50本塁打。本人の意欲に関係なく、相手チームがどれだけまともに勝負してくれるかにも、達成の確率は変わってくる。個人的には残り打席、すべてホームランを狙ってもいいから「50-50」を達成してもらいたいと思っている。(日刊スポーツ評論家)

ドジャース対レイズ 4回裏ドジャース1死一塁、打者フリーマンで、自身初の40盗塁となる二盗を決める大谷(撮影・菅敏)
ドジャース対レイズ 4回裏ドジャース1死一塁、打者フリーマンで、自身初の40盗塁となる二盗を決める大谷(撮影・菅敏)
【イラスト】大谷の今季盗塁
【イラスト】大谷の今季盗塁
ドジャース対レイズ 9回裏ドジャース2死満塁、サヨナラの満塁本塁打を放ち、ウオーターシャワーで祝福される大谷(中央)(撮影・菅敏)
ドジャース対レイズ 9回裏ドジャース2死満塁、サヨナラの満塁本塁打を放ち、ウオーターシャワーで祝福される大谷(中央)(撮影・菅敏)
【イラスト】大谷翔平の本塁打、盗塁
【イラスト】大谷翔平の本塁打、盗塁