阪神が今季も次々に投手の新星を誕生させそうだ。開幕ローテ入りが確実となっている門別啓人投手(20)にドラフト1位伊原陵人投手(24)、育成1位から支配下登録された工藤泰成投手(23)…。なぜ虎は好投手を生み出せるのか。縦じま一筋16年間の現役生活を送った日刊スポーツ評論家・岩田稔氏(41)が考察した。【聞き手=佐井陽介】
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なぜ阪神は次々に好投手を誕生させられるのでしょうか。今春も大竹投手が出遅れ、伊藤将投手の調子が上がらない状況で、門別投手や富田投手、ドラフト1位伊原投手らが台頭しています。中継ぎ陣でも育成1位から支配下登録を勝ち取った工藤投手が1軍枠に割って入りそうな勢い。今回は21年まで縦じま一筋16年間の現役生活を送った私なりに考察してみました。
<1>「素材型」を指名 まずはドラフト戦略の変化に触れないわけにはいきません。15年オフに当時の金本監督が就任した前後から、2軍の鳴尾浜球場で一緒に練習していても馬力のある「素材型」が増えたと感じていました。たとえば帝京大から15年ドラフト5位入団の青柳投手(現フィリーズ)。制球やフィールディングに不安がありながら、独特の腕の位置から出てくる直球の強さは入団当初からズバ抜けていました。18年ドラフト4位の斎藤投手(現日本ハム)も150キロ後半の直球に強さがありました。今を時めく工藤投手も「素材型」の1人と言えるでしょう。
少々の短所には目をつぶる。とにかく球が速い、強い球を投げる、コントロールがいい、打ちづらい変化球がある、といった長所を伸ばす。そんな球団方針の徹底、スカウト勢の目利きが投手王国の根底にあるのは間違いありません。
<2>「意識高い系」の増加 いわゆる「意識高い系」の若手投手も一気に増えた印象です。まだ私が若かった頃は自分も含め、少しでも暇ができたら遊びに出ようとする投手も少なくありませんでした。それが最近は24時間を野球に没頭できる投手ばかり。もしかしたらスカウトは性格も見極めた上で、向上心の高い選手を優先的に指名しているのかもしれません。
私の現役晩年、「意識高い系」の筆頭は16年ドラフト3位の才木投手でした。ルーキー時代から「自分はこの練習だけはやっておきたいので」と言えたぐらい、体の使い方やトレーニングの勉強に熱心な選手。私も「それはどういうトレーニングなん?」と鳴尾浜のウエートルーム場でよく聞いたものです。研究熱心な投手が成功する確率が高くなるのはわざわざ説明するまでもありません。
<3>バックアップ体制の整備 この10年間で、球団を挙げたバックアップ体制も今まで以上に整ったように映ります。リハビリや治療の専門家がトレーナーとして加入。2軍でも3日連続登板は避けたり、球数やトレーニングの管理も含めて、ケガをさせない環境作りを徹底しています。
さらに2軍新球場の日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎には8台の専用カメラが稼働する映像分析システム「ホークアイ」が設置され、施設全域に約20台の専用カメラが設置されたと聞きました。アナリスト部門も拡充され、選手はよりヒントを得やすくなりました。
「意識高い系」の「素材型」が恵まれた練習環境と起用法で伸びていく。そんな好循環が虎の投手陣を支えているのだと感じます。(日刊スポーツ評論家)




