今季は絶不調に見舞われている戸郷だが、前回の登板で6回2失点(自責点は1)で、今季初勝利を挙げていた。白星がついたことで状態がよくなるピッチャーはいる。戸郷がエースとして復活してくれるかは、チームにとっても重大事項だろう。それだけに今回のピッチングは注目していた。

結果は5回2/3を投げて1失点。残した数字だけを見れば「粘りに粘った」とも言える。エースとして投げ続けていれば、こういう試合もある。しかし、今の戸郷は好調時にたまたま不調だったわけではない。粘ったというより、中日打線に助けられた。初回に先頭打者・上林がヒットで出塁しながら盗塁失敗。6回は8番石伊が送りバント失敗。6回途中で9安打された戸郷が今後に向けて「大丈夫」と言える内容ではなかった。

まず真っすぐに対し、中日のバッターがタイミングよく捉えていた。唯一の失点となった岡林のソロも、内角149キロの真っすぐだった。好打者ではあるが、強打者ではない岡林に完璧に引っ張られ、今季1号を献上してしまった。本来の戸郷の真っすぐであれば、バットをへし折っていただろう。

開幕前に気になる情報を耳にしていた。戸郷は今季からカットボールを投げられるように取り組んでいると聞いた。真っすぐとフォークのコンビネーションで抑える戸郷にとって、新しい「曲がり球」を覚えれば、確実に投球の幅は広がる。真っすぐとフォークのコンビネーションで抑えるスタイルは私の現役時代と同じなだけに、戸郷の気持ちは痛いほどよく分かる。

しかし、ここには“落とし穴”がある。私もカットとシュートを覚えようとしたが、どうしても曲げようとしてしまうため、左肩の開きが早くなり、肘も下がり気味になってしまう。結局、モノにならないどころか、真っすぐもフォークの質も悪くなってしまった。どれぐらいの期間か覚えていないが、原因は分かっていても修復できるまで1シーズンぐらいかかったと思う。

もともと器用なタイプだったりすればいいが、戸郷の投げ方はひねって投げやすいフォームではない。今はカットを投げていないが、私と同じような“後遺症”が残っているのかもしれない。

戸郷の復調にいつ太鼓判を押せるのかは分からないが、もう少し時間がかかりそうな予感はする。そして8回に投げた大勢も2四球と暴投を与えたように制球力が悪く、3失点。戸郷とともに不安が残る試合になってしまった。(日刊スポーツ評論家)

中日対巨人 巨人先発の戸郷(撮影・上田博志)
中日対巨人 巨人先発の戸郷(撮影・上田博志)
中日対巨人 1回裏中日2死一、三塁、岸田(左)と言葉を交わす戸郷(撮影・森本幸一)
中日対巨人 1回裏中日2死一、三塁、岸田(左)と言葉を交わす戸郷(撮影・森本幸一)
中日対巨人 戸郷(左)は6回途中で降板する。中央は阿部監督(撮影・上田博志)
中日対巨人 戸郷(左)は6回途中で降板する。中央は阿部監督(撮影・上田博志)
中日対巨人 6回裏中日2死一、二塁、マウンドを降りる戸郷(左)右から2人目は阿部監督(撮影・森本幸一)
中日対巨人 6回裏中日2死一、二塁、マウンドを降りる戸郷(左)右から2人目は阿部監督(撮影・森本幸一)