昨季限りで現役を引退した元日本ハム谷口雄也氏(29)が、新天地からチームを支える。今月1日から球団のグループ会社「ファイターズ スポーツ&エンターテイメント」で、事業統括本部の職員として再スタートした。アカデミーコーチの仕事に加えて、来年3月に開業予定の新球場「エスコンフィールド北海道」のPR担当を務める。新たなステージへ踏み出した同氏が「世界がまだ見ぬボールパーク」の魅力を語った。【取材・構成=小林憲治】

“ワクワク感”を伝えたいと意気込みを示した谷口氏(撮影・小林憲治)
“ワクワク感”を伝えたいと意気込みを示した谷口氏(撮影・小林憲治)

新球場の完成を翌年に控える重要な1年で、谷口氏はPR業務を担うことになった。これからは裏方として日本ハムを支える。

谷口氏 できることであれば、選手として立つことが1つの目標ではありました。でも、それを決めるのは自分じゃないと切り替えて、今度はプロ野球ファン以外も、どうしたらボールパークにお客さんが足を運んでいただけるか考えています。形は違っても、また新球場に関われるのはうれしいです。

球団職員になり新球場のデータを勉強。選手時代には分からなかった細部も知り、日々新たな発見がある。

谷口氏 選手時代は「へー、天然芝なんだ、ガラス壁があるんだ」くらいの認識でした(笑い)。今は札幌ドームと比較してとか、もっと詳しいことを頭の中に思い描くと、とてもワクワクする。ファイターズだけでなく、プロ野球ファンの方々に伝えることができる役割でもあるので、そこに全力を注ぎたいなと思っています。特にワクワク感を伝えたいですね。

「世界がまだ見ぬボールパーク」と銘打つ唯一無二の新球場。たくさんの魅力が詰まっている。

谷口氏 未発表のことも多くて、上の人からは口を滑らすなよ、と言われていて難しいのですが(笑い)、ひとつ言えるのは、1日じゃ球場内の施設を回りきれないことですね。直近だと、サウナに入りながら試合が見られるというのも発表されましたが、他にもいろんなテナントが入る見込み。これからどんどん発表されていくので、楽しみにしてほしいです。何回も来て、毎回その良さを楽しんでもらえたらと思っています。

昨年10月の引退発表後は第2の人生に向け熟考。約1カ月がたったころ、球団からオファーを受け、即答で引き受けた。

谷口氏 僕の存在を大きくしてくれたのは、ファイターズであり、ファンであって、誰が見ても数字は大した成績ではない谷口っていう人物の存在価値を高めてくれたのは、北海道の方々のおかげなので、それを返していきたいと思い、即答で受けました。

5日に初出社し、約1カ月が経過。これまでと180度違う生活の日々を送っている。

谷口氏 野球脳から事務作業脳に変えるのが大変です。慣れるというより慣れろというところかなと。インプットすることがたくさんあります。選手時代には見られなかった部分を知って、いろんな部署のおかげで私もここまで来られたんだと。野球だけ頑張ってたからではないんだなって思いました。

元選手だからこそ伝えられることもある。その強みを生かして、さまざまな角度から新球場をPRしていくつもりだ。

谷口氏 選手目線のことも伝えられる。でも、引退した選手の名前の賞味期限は正直あると思います。何て言うか難しいところですけど、元選手をうまく使えたらいいなと。北海道で育ててもらって、還元できるチャンスでもあるので、うまく使って社内に新たな風を吹かせたい。ファンと選手をつなぐ懸け橋になりたいです。

札幌ドーム最終年の今年、日本ハムはBIGBOSSこと新庄監督の影響で、例年以上に注目の的となっている。

谷口氏 ビッグボスがメディアに毎日出続けてくれる中で、野球を知らない方たちもファイターズってなんだ、野球ってなんだと思ってくれていると思うんです。ビッグボスが大きな船を用意してくれて、そこに選手たちが、プロ野球ファンが、ファイターズファンが乗っかって、みんなで進んでいく。みんなが1つになれるような環境を提供できるように、この会社でやっていけたらと思っています。

ボールパーク「Fビレッジ」内に設置を予定している農園エリア(クボタ提供)
ボールパーク「Fビレッジ」内に設置を予定している農園エリア(クボタ提供)

<施設ガイド>

「Fビレッジ」の一角に農園エリアが設置される。ファイターズスポーツ&エンターテイメントは昨年10月、北海道大、農業機械メーカーのクボタと農業学習施設の設置について連携協定を締結。今春から着工予定で、ボールパーク開業に合わせて運営を開始する。

2階建ての学習施設は延べ床面積2400平方メートル。1階は1650平方メートルでバスケットコート4面ほどの広さ、2階は750平方メートルほどの面積になる予定だ。北海道の基幹産業である農業への関心を、多くの人に広めたいというのが主な狙いで、小学生を主な対象に親子で野菜の収穫体験ができる露地栽培エリアなどが設置される。

計画に携わるクボタKESG推進部の野上哲也氏(40)は小学校高学年の子どもたちをターゲットに挙げ「農業というものを身近に感じてまずは知っていただきたい。大人になった時に農業関連の仕事に従事してもらって日本、世界の農業を支えていく仲間になってほしい」と願っている。

◆エスコンフィールド北海道 23年北広島市に開業予定。建築面積5万平方メートル、収容人数3万5000人の、開閉式屋根がある天然芝球場。地下1階の掘り込み式のフィールドを基点に、観客エリアは地上4階建て。ガラス張りの巨大な壁があり、左翼席にはタワー型の特別エリア「TOWER11(タワー・イレブン)」を建設。世界初となる球場内温泉やサウナを楽しめる。

◆谷口雄也(たにぐち・ゆうや)1992年(平4)6月1日生まれ、三重県四日市市出身。「きゅん」の愛称で親しまれ、昨季限りで現役を引退。10月26日の現役最終打席は、代打で初球を左前安打した。通算成績は272試合出場、140安打42打点、打率2割4分1厘。22年1月1日から球団のグループ会社「ファイターズ スポーツ&エンターテイメント」で、事業統括本部の職員となった。新球場のPR業務とアカデミーコーチを担当している。