ホークスナインを乗せたジェット機は福岡空港を飛び立つと快晴の空の中を北の大地へ向かって飛行した。前日(19日)はナイトゲーム。楽天に5連勝を止められ、機内に乗り込むと、ナインは深くシートに腰を沈めた。この日は福岡~札幌の当日移動ゲーム。シーズンで最も長距離移動の旅だ。「さすがにナイター後の札幌移動ゲームはね」。チーム関係者も渋い表情だったが、この厳しい環境にしっかりと適応しなければならない。さらに今季初の6連戦。投手陣のやりくりも厳しくなってきただけに、チームにはボディーブローのようにじっくりこたえる長旅ではある。

 「いやあ、子どもですからね。そこはちゃんとしますよ。全然大丈夫です」。札幌ドームに到着した甲斐は、笑顔で言った。機内でのことだ。3人席の甲斐と田中に挟まれる形で、幼児をだっこした若いお母さんが座っていた。離陸直後から子どもがぐずりだし、何度も泣いていたが、田中も甲斐も小さな女の子に笑みを絶やさなかった。恐縮気味に子どもをあやすお母さんの気持ちも分かるのだろう。約2時間半のフライト中、甲斐も田中もやさしく対応していた。到着後は田中が頭上の棚からお母さんの荷物を取ってやり、甲斐も「バイバイ~」と女の子に手を振って飛行機を降りた。

 甲斐は20日、開幕16試合目にして先発マスクを外れた。7回から途中出場。9回には2死一塁から四球を選んで逆転勝利への望みをつないだ。敗れはしたが、心優しき「女房役」の姿はグラウンド外でもしっかり目にした。【ソフトバンク担当 佐竹英治】