プロ初安打、初本塁打、初勝利…。記念のボールといえば、選手が手元に置いておくか、親や家族にプレゼントするのが大方だろう。喜ばしいことだ。だが広島岩本のケースは、とても悲しい話だった。

 17日、呉で主催試合が開催されたのだが、その9年前の09年5月、ルーキーだった岩本はここでプロ初安打をマークした。初打席、ロッテ小林宏之から中前打を放ったのだった。そのボールはどうしたのか? 「それが、もうないんですよ」と寂しそうに明かした。

 相手チームから1度は岩本に渡されたが、これを当時のブラウン監督が「私からひと言、メッセージを書いてあげよう」と持ち去った。そのまま行方不明に。「今ごろ、この練習球に交じってるか、海の中にでもあるんじゃないですか」。あるいはベースを投げるように、ブラウン氏がどこかへ投げ捨てたかもしれない。なんと嘆かわしい。

 岩本は「ホント、返してもらいたいですよ」と苦笑いで続けた。残念ながら翌日に出場選手登録を抹消されたが、これからも記念球を手にする機会はある。ちなみにサヨナラ打は、プロでまだ打っていない。【広島担当 大池和幸】