小さくガッツポーズを決めていた。

 DeNA今永昇太投手が12日阪神戦、7回2死で迎えたロサリオを空振り三振に仕留めた。この試合110球目。それまで阪神打線を3失点に封じる好投の中で、内に秘めた感情を少しだけ表に出した瞬間だった。今季3勝目を手にした試合後、マウンドに上がるまで、心の変化について明かした。

 前日11日の試合、先発した1歳後輩・浜口の降板する姿が、脳裏に残っていたという。3回途中4失点で無念の降板をした後輩を見届け「マウンドから降りるとき悔しさがにじみ出ている姿を見て、ああいう気持ちが自分自身には足りていないんじゃないか」。打たれると弱気の虫が顔を出すことが多い自分とは対照的に、結果を出せずあふれそうな感情を必死にこらえる後輩の姿に刺激を受けた。ファイティングスピリッツを忘れず、浜口の姿勢を学んだからこそ、序盤に糸井、福留のベテランに2発浴びても大崩れはしなかった。

 試合前、女房役で2歳年上の嶺井から言われていた言葉があった。「ただ投げて抑えるだけじゃダメ。テンポよく、攻撃に流れを生むピッチングじゃないといけない」。自分の投球を見つめすぎるがあまり、悪いときほど独り相撲をとっていたが、もともとの期待値は違う。昨季はチーム最多の11勝。エース候補の1人だ。チームに流れを呼び込む投球が求められる。そのハードルを課した嶺井の言葉を胸に「攻撃は長く、守備は短く」と言い聞かせた甲斐あってか、自ら2安打マーク含め17安打12得点と爆発。投打がかみ合った。

 昨季は2桁勝利をマークした8月に、苦労しながら3勝目。まだまだ物足りないかもしれない。でも、1カ月ぶりに手にした白星には、後輩の姿と先輩の言葉が詰まっていた。【DeNA担当 栗田成芳】