観覧車もメリーゴーラウンドも、当時はなかった。西武本田圭佑投手が学生時代に何度も投げた楽天生命パーク。プロ入り4年目で初の1軍凱旋(がいせん)マウンド前日、スタンドを見上げていた。「雰囲気は少し違っても懐かしさが残っています。甲子園目指して使っていたところなので」。練習から引き揚げるときには、ていねいに地元ファンにサインを書いていた。

プロに入ってから、目標の1つだった。「友達や恩師に仙台で見たいと言われていた。プロに入ってから、ずっと投げたいと思ってやってきた」。実家も球場からほど近く、楽天球団誕生後は友達と観戦に何度も訪れたという。思い出のつまった場所で先発投手として投げる絶好の機会が、17日に訪れた。「地元で投げたかった思いが強かったけど、平常心を持ってやりたい」。高ぶる気持ちを抑えるように、前日練習後に語っていた。

そんな心境を、ファンにサインを書くときと同じように、ていねいに答える口ぶりから、人柄の良さが伝わってくる。ただその気の良さゆえに、周囲の目を気にし過ぎてしまうことが、プロの世界で戦っていくには改善を要すると考え、メンタルトレーナーに相談。さらには、昨秋から口ひげを蓄え始めた。「何か変わりたいという思いから伸ばし始めて、堂々としてきたなと多々言われるようになった。ワイルドになりたいという気持ちがあったので」と内面を変えるためにも、ひげをきれいに整える。

凱旋(がいせん)マウンドは4回2/3までリードを守りながら、あと1人いや、あと1球のところで元同僚・浅村に逆転3ランを浴びた。凱旋白星はかなわなかった。でも「マウンドにはいつも通りの気持ちで上がることができました」という言葉が頼もしい。チャンスはまだある。そのワイルドなひげが、トレードマークとなる日も、そう遠くはない。【西武担当 栗田成芳】