世界が未曽有の見えない敵と戦っている。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、2月下旬からプロ野球界もさまざまな自粛をし、制約を受けた。オープン戦、練習試合の無観客での実施や公式戦の延期。選手らも外出の禁止、自粛も余儀なくされた。俗に「コロナ疲れ」に陥ってもおかしくないような状況である。

日刊スポーツの記者として仕事を始めて30年目の今年。もちろん、こんなことは初めてで、異例の取材が続いている。担当しているソフトバンクの選手を始め、12球団全選手が見えない開幕に向かって、不安を抱えながら調整している。「難しい」。どの選手も口からでる言葉だ。

当初3月20日だった開幕が最短4月10日へ。そしてさらに最短4月24日へ延期されたとき、ソフトバンク投打のベテランは口をそろえるように危惧(きぐ)した。

和田 開幕がいつになるのか、その開幕に向けて調整が難しいとか、そんな自分のことだけの話ではなくなっている。なんとかこの状況が終息してほしいと願っているし、何より自分たちが(コロナ感染症に)かからないようにしないといけない。

内川 僕らは野球のことで、いつ開幕できるのとかを気にしているが、世の中はもっときつい思いをしている人もいる。(開催について)いろんな判断を迫られている人も大変だと思う。

野球選手でもあるが、ひとりの社会人としても、どうとらえるか。考えさせられるコメントだった。内川の出身地である大分では病院で多くの感染者が発覚して内川も「現実味を感じるし、早く治ってほしい」と願っていた。

マスクの買い占めや、ネットのデマに躍らされてのトイレットペーパーなどの買い占めなど「自分だけ」の思考に負けてしまいそうだ。これこそ本当の「敵」なのかもしれない。この時期だからこそ、周りに目を向け、手を差し伸べることで「自分」より「他人」を思いやる気持ちを大事にしたい。【ソフトバンク担当 浦田由紀夫】