不器用そうだが、真っすぐで力強い男だ。オリックスの新助っ人タイラー・ヒギンス投手(29)が、11日の日本ハム戦(京セラドーム大阪)で来日初白星を挙げた。

同点の8回にマウンドへ上がり、1イニングで2三振を奪って無安打無失点。開幕からの連続試合無失点を6に伸ばし、チームに流れを引き寄せた。「(相手の打順は)2、3、4番だった。チームで一番いい打者がそろっている。自分ができること以上のことをやろうと思って、力んでしまった」と言うが、「冷静になって、リラックスができて自分の投球ができた」と満足そうだった。直後、打線が勝ち越してヒギンスに勝利がついた。

ウイニングボールを受け取り、お立ち台に上がると「とてもうれしい。たくさんの人の前でヒーローインタビューを受けるのは人生で初めて」とカメラのフラッシュを浴びて照れた。その視線の先では金髪の女性がほほ笑んでいた。「公開してもらって大丈夫です。レーガンです。23歳」。昨年末に婚約し、今年3月に結婚。「間違いなく力になっています。今年はコロナの影響で自粛期間が長かった。家にいる時間も長く、家の中でもすごくサポートをしてくれて、心の支えになっています」。愛する妻への感謝の言葉を並べた。

プロポーズは突然だった。昨秋、交際していたレーガン夫人に「日本へ行くよ」と打ち明けた。そして、クリスマスにサプライズを仕掛けた。「決戦の舞台」は4年前に2人が初めて出会ったスタジアム。何もかも内緒で車に乗せて連れ出した。スタジアムに2人の思い出の曲を流し、ファウルゾーンのグラウンド入り口から外野まで赤いバラを間隔を空けて並べた。彼女にバラの道しるべをたどってもらった先、緑の天然芝の上でダイヤモンドの「婚約指輪」が光っていた。ヒギンスはそれを拾い、そっと片膝を地面につけた。彼女の左手薬指にリングをはめ、愛の告白をした。レーガン夫人は驚きとうれしさのあまり、泣き叫ぶしかなかった。

この日の記念球は「まずサインをして、家族の誰かにあげます」と笑顔でジョークを飛ばしたが、相手は決まっているに違いない。「日本でやっていけるという自信はついてきた」。金髪助っ人が、ここからさらにワイルドに攻める。【オリックス担当=真柴健】

オリックス対日本ハム 8回に登板のヒギンス(撮影・黒川智章)
オリックス対日本ハム 8回に登板のヒギンス(撮影・黒川智章)