ソフトバンクの川村隆史コンディショニング担当(享年55)が急逝した。担当する3軍遠征先の神戸の宿舎で16日、亡くなった。突然の訃報に絶句するしかなかった。あれだけ元気な男が…との思いしかなかった。

福岡移転後の「ホークス」を誰よりも知る1人だった。田淵ダイエー時代の92年に入団。トレーニング、コンディショニング部門を担当し、約30年間、ほぼすべての選手の「体」を預かってきた。フィジカルのケアは当然ながら、川村さんが最も気を配ったのは選手たちの「メンタル」ではなかったか。ケガや成績不振の選手たちには、ひょうきんなキャラクターを演じながら彼らのモチベーションを上げていった。今春の宮崎キャンプ。初日からハイテンションでアップを先導する川村さんはボソリと言った。「いろいろとね。明るくやってもらわないとね」。選手個々もさることながら「チーム全体」を俯瞰(ふかん)しながら、練習の雰囲気作りにも腐心していた。気遣いの人だった。

大体大時代は空手部。入団当初はキャッチボールさえままならなかったが、今では大きな声とともにミットで快音を響かせていた。ある選手の披露宴で黒帯姿の胴着で空手の形を演武したことがあった。何ともりりしく、会場にピンとした緊張感さえ漂ったほどだった。

日本ハム戦に勝利した16日の試合後、川村さんの訃報が選手たちに伝えられた。三笠GM、工藤監督の後に連絡事項伝達のためにナインの前に立った山口マネジャーは川村さんとの思い出を口にして涙が止まらなくなった。2人は同じ学年。ダイエー時代から苦楽をともにしてきた。11月で2歳になる初孫がかわいくて仕方なかった川村さんはV旅行を楽しみにしていた。「(孫に)いっぱいハワイで洋服を買ってあげたいんよ」。そう言ってスマホに映る孫の写真を見ては目尻を下げた。

悲しい秋風が吹いた。ホークスにとって大きな「戦力」を失ってしまった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】