今年から阪神担当になり、岡田彰布監督(66)の言葉に触れる機会が増えた。取材の場では野球についてはもちろん、社会人としても学ぶことがたくさんある。

12月に大阪市内で行われた岡田監督のトークショー。司会から「令和の理想の上司と言われているが」と話題を振られると「ええそうなの? そんなこと考えてやってるわけでもないし(笑い)」と率直なものいいで笑わせた。そしてすぐさま「やっぱり勝つことによって、そういうふうに見られるかなと思う」と冷静に分析した。

最年長が33歳の西勇輝投手と若いチーム。子ども以上に年の離れた選手たちの接し方の原点は、現役引退後に2軍監督などで若い選手とともに過ごした時間だったという。「昔自分らが経験したことを、そのまま今の若い選手に言っても当然だめ。2軍の7年間が今になるとプラスになっている」。

当時の選手が自分で「僕はほめられると伸びるタイプです」と言った記憶を思い返すと、会場は再び笑いに包まれた。「それは第三者が言う言葉であって、自分で言うなって思ったんだけど、あー今の若い子こんななんだって」。ちょっと違うだろと思っても完全否定せず、こういう考え方もあるのだと受け入れる。「理想の上司」の姿をかいま見た。

今も徹底するのは、グラウンドで選手を教えないということ。ある選手を指導すれば、それを見ている他の選手に嫉妬や疑念、不安を抱かせる。2軍を率いていた当時も選手に言いたいことがあれば、グラウンドに出る前にコーチ会議で担当コーチに伝えていた。

「若い選手との接し方というか、ある程度距離を置いたほうがいいんじゃないかなとは、そういうの思いましたね」。18年ぶりリーグ優勝、38年ぶり日本一に輝いた昨季、選手たちはメディアを通して指揮官の言葉を知り、思いをくみとっていたという。「マスコミを通じてみんなに発信するからとか一言も言ってない。それが自然とそういう形になるんだったら、僕はそれでいいんじゃないかなと思いましたね」。ほどよい距離感が若い選手を育てた。

野球界だけでなく広い社会にもつながる話。私も入社してから10年が経ち、後輩もたくさん増えた。この日の岡田監督の言葉を心に留めながら、社会人として成長していきたいと思う。【阪神担当=磯綾乃】