過去に高校野球担当をしていたので、当時取材した選手がプロにも複数いる。阪神西純矢もその1人。キャンプで再会して、少しばかり昔話もできた。
創志学園(岡山)時代に取材した記憶は鮮明だ。野球部グラウンドのブルペンで、捕手の真後ろ、球審に近い位置で投球を見せてもらった。真冬で、かなり寒かった記憶があるが、うなるような剛球を投げ込み、正捕手がイテテテテ…と顔をしかめた。のちに聞くとミットのひもが切れていた。ひもが切れたのは1度や2度ではない。ドラフト1位だな、と確信した。
あれから5年。体はたくましくなり、ブルペンは変わらぬ迫力があった。高校時代の話には「懐かしいですね~」と笑っていたが、ある話題を振ると、心配そうな顔をした。今年、中日にドラフト1位で入団した草加勝投手(22=亜大)のこと。キャンプ前に右肘のトミー・ジョン手術を受けた。通例なら復帰まで1年以上…。当然、連絡をとった。希望に満ちた入団直後だけに、やはりショックは隠せなかったという。
2人は創志学園の同期。当時、西純ばかりが注目されていたが、同校の長沢宏行監督(当時)は「草加っていうのも面白いんですよ。将来的には西と張り合えると思っています。覚えておいてください」と売り込んでいた。ガリガリの細身だった右腕は、厳しい練習で知られる東都の名門で腕を磨き、見事にライバルと同じドラフト1位を勝ち取った。才能をきっちり花咲かせた4年間の努力は想像にかたくない。
プロで奮闘している西純は5度目を迎えたこのキャンプで、フォーム固めに苦心している。豊富な投手スタッフ陣にあって、1軍枠は極めて狭き門。実質、空いているのは1枠か、2枠か。相当のアピールがないと生き残れないと本人が最も理解している。それでも、盟友の厳しい境遇に触れた西純の心は、そう簡単に折れることはないと思っている。【阪神担当=柏原誠】




