広島大瀬良大地投手(33)が、球界55年ぶりの快挙へひた走っている。防御率は0・85。このままシーズンを終えて防御率0点台なら、70年の村山実(阪神)以来、2リーグ分立後2度目の偉業だ。

4日現在106イニングを投げ、わずか自責点10という安定感を誇る。現在の大瀬良に最も近い村山の70年の登板を見ると、9月17日巨人戦を終えた107回2/3。このときの防御率は1・00(自責点12)だから、今季の大瀬良は上を行くペースだ。

大瀬良もすごいが、村山もすごかった。実はこの年の村山は選手兼任監督だったのだ。

球団発行「阪神タイガース 昭和のあゆみ」に、その経緯が詳しい。69年オフに南海の元監督、鶴岡一人に監督就任を要請したものの、固辞された。そこで長期的視野に立ったチーム作りを目指し、32歳だった村山の就任となった。

同年には南海の野村克也もプレーイングマネジャーとなり、関西に2人の選手兼任監督が生まれた。

70年シーズンに話を戻す。村山はチームの指揮という激務のかたわら、投手稼業に奮闘した。8月9日大洋戦終了時まで0・99だった防御率は、9月27日中日戦を終えると1・25にまで悪化してしまう。

ここから5試合の登板で、先発に救援にとフル回転を見せる。3完封を含み、34イニング無失点という驚異的な投球を見せる。最終登板となった10月18日のヤクルト戦でシャットアウト。ついに防御率は0・98となり、シーズンを終えた。

そこから防御率0点台の投手は1人たりとも出ていない。

阪神はこの年、優勝した巨人から2ゲーム差の2位と健闘した。6連覇と脂の乗り切った王者を最後まで追い詰めた指揮、そして快投は、まさに「ミスタータイガース」の称号にふさわしいものだった。

防御率0点台を、分かりやすく表せば「9イニング投げても、平均1点も取られない」というものすごい数字である。2リーグ分立後の唯一の快挙は、監督とエースという、過酷な「二刀流」をこなしてのものだった。

今季の大瀬良が0点台を達成すれば、村山の偉業も語られるに違いない。55年の時を超え、球界の大先輩に光を当てる。シーズン後半戦の大瀬良には、その役割を担ってのマウンドが続く。

【記録室=高野勲】(22年3月のテレビ東京系「なんでもクイズスタジアム プロ野球王決定戦」準優勝)