「稲川誠が7月31日に90歳で亡くなったって、ニュースに出てるんだけど」

思いもしない“知らせ”に言葉を失いかけたが、そんなはずはない。電話の主は他でもない、稲川さんだからだ。

稲川誠さん。大洋(現DeNA)で通算83勝を挙げた投手で、引退後は球団でコーチやスカウト、寮長を長らく務めた。聞けば、知人からの電話で自らの“訃報”を知ったという。「そんなわけないだろう。一昨日も話したばかりじゃないか」。稲川さんもびっくり。出典不明のネットの書き込みか何かだったのだろうか。

私も検索してみた。元ネタは見つけられなかったが、ウィキペディアでは7月31日に亡くなったことになっていた。だまされた誰かが更新したのかもしれない。稲川さん本人は「もう90歳だからさ、いつ亡くなってもおかしくない。実害はないんだけど」と笑っていたが、フェイクニュースを目の当たりにし、背筋が寒くなった。

ちなみに稲川さん、80歳を超えても秋田まで高校野球を教えに行き、7月25日にはめでたく卒寿を迎えた。お元気そのもの。今も毎日ベイスターズの試合はチェックしている。「だんだん、よくなってきたねえ。ここからだよ。相川に頑張ってもらいたい。筒香が打つと、うれしいねえ」と、スカウト時代に関わった指揮官や寮長時代にかわいがった大砲を思いやっていた。【古川真弥】

大洋時代の稲川誠さんの投球フォーム(1966年撮影)
大洋時代の稲川誠さんの投球フォーム(1966年撮影)