誰でも投稿できるYouTubeだからこそ、同じ野球動画でもジャンルは幅広い。ものまね芸人の桑田真似さん(42)もユーチューバーの1人。プロ野球選手のそっくりさんを集めた草野球「ものまねプロ野球」の動画を投稿している。

鈴木似誠也、不都合嘉智…どことなく似ている選手たちがプレーする様子を見ることができる。昨年10月から試合動画を上げるようになった。「対戦相手チームにとって、イベント色を強くしたかった。映像に残すことで記録にも残る」と説明した。

動画の編集作業をするものまね芸人の桑田真似さん(本人提供)
動画の編集作業をするものまね芸人の桑田真似さん(本人提供)

毎週末、墨田区の錦糸公園で行っている。年間で70試合を消化。「不都合さんは内角の球を避けて転んで、どろんこになってもらってます」と17年のCSを再現する。自身もマウンドに上がるときは、ひざまずいてプレートに右肘をつける。幼い頃、誰もがやった選手のものまね。誰にも気兼ねせず「細かすぎて」を追求できるのもYouTubeの魅力だ。

新型コロナウイルス感染拡大で、野球を伝えることもできなかった。それでも真似さんは動画投稿を続けた。TOEIC990点の英語力を生かし、ニュース番組の解説をし始めた。「PCRって何の略かとか、ウイルスの正しい発音とかを紹介しました。桑田さんも英語に堪能なので、本人が解説しているような動画も作りました」と照れくさそうに笑った。桑田氏の「マイナスはプラスにするための準備期間」との言葉を支えに、家にいるからできることを発信していった。

NPBが選手からのメッセージを回した「キャッチボールプロジェクト」も再現した。本家はひと言発したあとに、ボールを投げてつなぐ。真似さんは、投げる前にボールを除菌する場面を追加した。「プロ野球選手の活動に乗っかる。それに我々のメッセージを乗せて伝えようとしました」。本家とニアピンの立ち位置を貫く。

6月14日から野球を再開。ものまねプロ野球専用のチャンネルを新たに開設し、普及活動に力を入れる。「あるとき、年配の方が球場に来て『鈴木似誠也さんいますか』と尋ねられたことがあった。よく話を聞くと本物のおじいさんで。こういうこともあるんだなって驚きました」と徐々に広まってきたことを誇らしげに笑った。

ゆくゆくは地域貢献が目標だ。「錦糸公園を盛り上げたい。甲子園のような、にせものの聖地にしたい」と意気込む。肩の力を抜いて野球を楽しむのもいい。【湯本勝大】