春のキャンプが無観客となって、ファンの方と同じようにテレビの映像で選手の動きなどを見させてもらっている。「少し早いんじゃないか」と思われる方もいるだろうが、優勝予想を披露する。

パ・リーグは、日本シリーズ4連覇中のソフトバンクが最有力との見方が多いだろう。だが、私は楽天を推す。根拠はドラフト1位の早川隆久投手(22=早大)だ。長いペナントレースは投手力がものをいう。彼はチームに大きな貯金を運ぶ可能性を秘めている。

6日、ブルペン投球をする楽天早川
6日、ブルペン投球をする楽天早川

昨年、初めて投球を見た。タイプとしては剛速球というより快速球で、制球力と、ゲームの状況を的確に読む冷静さを武器としている。雰囲気、球威、キレ、コントロール、駆け引き、ピンチでも表情を変えない冷静さ、勝負根性…。投手の全てを持ち合わせていることに驚き、ほれ込んだ。

2月上旬のブルペン投球も見たが、投球フォームも問題なかった。テークバック、トップ、リリースまで常に安定している新人はなかなかいないし、きれいに回って投げる姿が印象に残った。

打撃投手を務めた時の映像を見ても予想通り。ブルペンでの雰囲気が同じように現れていた。プロ野球のキャンプに初めて参加し、技術面はもちろん、メンタル面の変化にも注目したが、自分をよく知っているのだろう。練習試合、オープン戦と今のままの雰囲気で投げられれば、間違いなく大きな戦力になる。

彼に必要なのは、体の各部位の強靱(きょうじん)さをいかに継続していくかだ。素晴らしいものを持って、ドラフト1位でプロの世界に入ったのだから、最初の方は学生時代のピッチングの内容、特に配球面は今までの自分なりの考えでゲームにトライしていった方がいい。プロは甘くないし、ちょっとしたミスも許してくれないが、つまずいたら変えればいい。

早川君が加入した時点で、楽天を優勝予想に挙げた。その後、ヤンキースから田中将大投手も加入した。これによって、ますます楽天がペナントを手中にする確率は高まったとみている。ブルペンでの映像を見る限り計算は立つ。何よりも勝者のマインドを持つ大投手の加入で、チームの雰囲気が大きく変わることが大きい。

昨季最多勝の涌井、岸、則本昂と実績、実力を兼ね備えた投手で形成される先発ローテーションは、12球団でも屈指。通常、新人を計算に入れることは選手層の薄いチームが考えることだが、早川君は別格。楽天がソフトバンクを止めるのか、楽しみにしている。(つづく)

小谷正勝氏(2019年1月18日撮影)
小谷正勝氏(2019年1月18日撮影)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から19年まで、再び巨人で投手コーチ。