日本で最もWBCのチケットが高確率で獲得できるイベントが1月、都内で行われた。米大リーグ選手会が主催する「MLB STEMリーグ」だ。STEMとはサイエンス(S=科学)テクノロジー(T=技術)エンジニアリング(E=工学)マスマティクス(M=数学)の頭文字を組み合わせた教育用語。MLBや野球の知識と、少しだけ数学的な素養が必要なボードゲームに、小学生から高校生まで56人が参加。なんと、日本一の偏差値を誇る開成高校の生徒らを抑えて優勝したのは、小学生コンビだった。

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「STEMリーグ」は数学的なセンスが必要で、前年度優勝チームは開成高校の生徒だという。とても高度なゲームかと思いきや、全く違う。野球型のボードゲームで「ヒット」「三振」「フライアウト」「本塁打」などの打撃結果を、実際の選手データの確率に沿って出していく。ドジャース大谷翔平なら昨年727打席のうち、本塁打は55本で、約8%を占めた。三振は187だから約26%。これを円グラフ化し、透明のルーレットを重ねて、矢印をはじく。そこで出た結果で、ゲームを進めていく。

選手によって、単打や二塁打、三塁打、本塁打、三振などの確率は異なるが、攻撃の結果はルーレットで決まる。もちろんドラフトで好選手を集めるのが勝利確率を高めることになるが、結果は運が占める割合が大きい。守備側は2つのサイコロを振って、出目によってはルーレットの矢印を1マス分、動かせる。例えば、本塁打から三塁打や四球に変更できる。出目は投手の能力によって、出る確率が調整されている。さらに、ワイルドカードとして、攻撃側には盗塁や送りバント、守備側には敬遠やけん制球、ダブルプレーなどが繰り出せる。

関係者が、英語を勉強している関東と関西の知り合いに声をかけて集めたという出場者は、わずか56人だった。今回が第2回となる日本大会に優勝したのはアフタースクール「ザ・クラブルームズ」に通う、小学生の仲真楽さん(5年)と金子冬聖さん(4年)のコンビ。大宮国際中、開成高など高偏差値の中学生、高校生のチームを下したのだが「ルーレットの運が良かった」と勝因を語った。

優勝賞品として、世界中から勝者が集まる米フロリダ州での世界大会出場権に加え、WBC東京ラウンドの日本戦チケット、マイアミでの準決勝のチケットが贈られた。WBCを主催するWBCIは、米大リーグ機構とMLB選手会で構成されている。このため、日本でプラチナ化しているWBCのチケットには事欠かない。

驚くべきは「MLB STEMリーグ」が大リーグ選手会の非営利部門によって世界12カ国で行われており、3万人以上が参加している事実だ。へバー・エミコ部長によると「野球を通じての国際交流」が目的という。WBCは、野球の世界的普及を目指して大会が始まったが、草の根レベルでもMLBは野球ファン獲得へ余念がない。「理系教育に役立つ」との触れ込みがあれば、親や学校は積極的にゲーム参加を促すだろう。メジャーリーグおよび同選手会の世界戦略は、日本球界にも参考となりそうだ。【斎藤直樹】

「MLB Players STEM League in Tokyo」の日本大会の様子
「MLB Players STEM League in Tokyo」の日本大会の様子