取材歴40年の編集委員が今年のプロ野球の注目ポイントを紹介していきます。最終回は中日。開幕から苦しい状況が続いていますが、目を凝らすと、あるイメージが浮かんできます。最下位からリーグ3連覇(21~23年)したころのオリックスと似た「成長曲線」を描いています。チーム力の比較、担当記者の証言、そしてプレー以外での類似点から、共通項を探しました。竜の夜明けは近い。【取材・構成=沢田啓太郎】
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22年を起点に直近の3年間、毎年チーム防御率を向上させている球団はセ、パ合わせて4球団ある。阪神、日本ハム、DeNA、そして中日。中日以外はみなAクラスで、中日だけが投手力の充実をペナントレースに生かし切れていない。
似た状況だったのが3連覇前のオリックスだ。2017年からほぼ毎年、チーム防御率を向上させながら、順位は4、4、6、6。山本由伸が頭角を現し、山岡泰輔、田嶋大樹のドラフト1位組も順調に伸びていたが、白星を重ねるまでには至らなかった。
「ゲームチェンジャー」となったのが、宮城大弥。21年にプロ2年目にして13勝(4敗)を挙げる活躍を見せ、右の山本、左の宮城の両輪が、チームを優勝に押し上げる原動力となった。もうお分かりだろう。今の中日に置き換えると、山本由伸が高橋宏斗、宮城大弥が金丸夢斗だ。
左右のエースが互いに刺激し合い、チーム力全体を押し上げてきた例は過去にたくさんある。古くは巨人の堀内・高橋一、最近ではソフトバンクの有原・モイネロもそうだ。山本・宮城コンビ同様、高橋・金丸コンビも年齢が近く(後者は同学年)、相乗効果が長く続く期待も持てる。
21年のオリックスには能見篤史、平野佳寿という実績のあるベテランが加入、復帰し、投手陣に厚みをもたらした。今年の中日には大野雄大、柳裕也、そして涌井秀章も控えている。新人の中西聖輝、桜井頼之介もポテンシャルは高く、「投手王国」になる可能性は秘めている。
問題は打線だ。オリックスも下位低迷時には吉田正尚の孤軍奮闘が目立った。しかし、優勝した21年は杉本裕太郎がプロ6年目にして大ブレーク。若手の宗佑磨が伸び、福田周平も一皮むけて、一気に投打がかみ合った。新外国人のミゲル・サノーが、21年のオリックス杉本のような存在になってくれれば、開幕から苦戦する状況も一変するだろう。
21年のオリックスも開幕直後はつまずき、4月中旬には最大で借金6を抱えてしまった。しかし、5月から調子が出始め、交流戦優勝をバネにして、最下位から25年ぶりのリーグ優勝まで駆け上がった。調整が難しかったWBC組の高橋、金丸の調子が上がってくれば、快進撃も夢ではない。
チームの雰囲気はどうだろうだろうか。まず、遊軍としてオリックスの飛躍を目の当たりにしてきた堀まどか記者に聞いた。
堀 19、20年と2年連続最下位でしたが、投打がかみ合えばやれるという雰囲気はありました。山本由伸という絶対的なエースがいて、連敗はしないという安心感がありましたから。そしてドラフト戦略の成功です。山本はドラフト4位ですが、山岡、田島、宮城といったドラフト1位投手たちがしっかり結果を残したことですね。
野手でも14年2位の宗佑磨、17年3位の福田周平、18年1位の太田椋と2位の頓宮裕真、19年2位の紅林弘太郎らが戦力となり、投打がかみ合うようになった。
加えて堀記者が挙げたのは、チーム内の「緊張感」だった。
堀 20年シーズン途中から就任した中嶋聡監督は、チーム内の情報が漏れることを嫌っていました。良く言えばおおらかだったチームに、適度に緊張感が漂うようになりましたね。
現在の中日はどうか。担当1年目の佐瀬百合子記者に聞いた。
佐瀬 決してムードは暗くはありません。試合開始直前に選手たちはベンチでハイタッチをかわしてゲームに臨むのですが、毎試合ダッグアウト裏にまで声が響いて、いい意味でうるさいくらいです。
ただ、今のところ、投打がかみ合っているとは言い難い。オリックスのようにジャンプアップするには、野手陣の底上げが欲しい。
佐瀬 投手も野手もみんな本当にまじめで練習熱心です。新外国人のサノーもバンテリンドームでは連日早出特打して、大粒の汗をかいていました。
岡林勇希が右太もも裏の肉離れで離脱したのはとても痛いが、ジェイソン・ボスラーが昇格。負傷中の上林誠知が戦列復帰すれば、上がり目はある。
チーム内に適度な緊張感はあるのだろうか。
佐瀬 ベテランの方々がすごく練習をするんです。大野投手や涌井投手はキャンプ初日から連日ブルペン入りしていました。柳投手も含めてベテランが一生懸命、練習するので若手は手を抜けません。
若手が多いチーム状況下で、中堅以上の選手たちが明るく前向きな雰囲気をつくり出している。21年のオリックスにも似ている。
堀 元大リーガーのアダム・ジョーンズは数字的にはいまひとつでしたが、とにかく明るくて、存在感でチームを引っ張ってくれました。若い選手たちもやりやすかったと思います。
佐瀬 (4月2日巨人戦で)大野投手が完投でチームに今季初勝利をもたらした時、ロッカールームで喜びの雄たけびをあげる選手たちの声が2分くらい続きました。近くで囲み取材していた井上一樹監督の声が、聞き取れないくらいでした。
チーム内の雰囲気も共通点が多い。
最後にプレー以外での共通点を探してみる。
オリックス中嶋、中日井上両監督とも2軍監督から1軍に昇格している。中嶋監督は秋田、井上監督は鹿児島と、ともに地方出身。高校から直接プロ入りし、現役で20年以上プレーしている。
中嶋監督を現役時代から知る日刊スポーツの高原寿夫編集委員は「ぶっきらぼうでこわもて、口下手だったが1人で話を聞きにいって邪険にされたことはない」とコラムで書いた。佐瀬記者によれば、井上監督も取材を拒んだことはなく、質問には誠実に答えてくれるという。
そして「ピンク色」。井上監督は現役時代、当時の星野仙一監督にアピールするため、ピンク色のリストバンドをしてプレー。「ピンキー」とも呼ばれた。監督になってからも、「ラッキーカラー」をさりげなく身につけている。
オリックスは15年から「ピンク色」のユニホームを販売。女性ファンに大人気で、女性向けイベントの「オリ姫デー」では、京セラドーム大阪がピンク色に染まった。ピンク色をあしらったユニホームの作成では、阪神やソフトバンクの方が先行したが、印象度の強さではオリックスが上だ。
「こじつけ感」は自覚しつつ、ほかにも共通点を探すとおもしろいかもしれない。これも、プロ野球を楽しむ1つの方法だ。(この項おわり)
◆21年のオリックス 山本が初めて開幕投手を務めるも西武に負けチームは10年連続で開幕黒星。調子が上がらず一時は借金6を抱え、4月終了時点で11勝13敗6分けと負け越していた。5月下旬の交流戦から投打がかみ合い、12勝5敗1分けで11年ぶり2度目の交流戦V。リーグ順位を交流戦前の5位から3位にあげた。
リーグ戦再開後も好調で、阪急時代の84年以来の11連勝を記録するなどして首位に立った。首位争いの主役になるもシーズン終盤にもたつき、一時はロッテにマジック点灯を許してしまう。しかし、5月28日以降は17戦15勝と無双状態だった山本の奮闘もあり、首位で全日程終了。10月27日に2位ロッテが楽天に敗れ、96年以来25年ぶりのリーグ優勝を果たした。マジックは1度も点灯しなかった。







