インタビューに答える阪神平田2軍監督(2019年3月15日撮影)
インタビューに答える阪神平田2軍監督(2019年3月15日撮影)

ファームとはいえ「1軍ありき」がこの世界の基本である。1軍戦力の現状、ペナントレースの展開を見極めながら、必要な戦力を優先して調整させ、2軍選手のレベルを上げていくのが役目。今年もファン待望の開幕が間近に迫っている。オープン戦の成績は下から数えて2番目。戦力が見えてこないままのチームをバックアップしていくとなると大変だ。見当がつきにくい補充ポイント。さて。平田監督、どこから手をつけていくか。ファームを指揮すること3度目。己の役目を知り尽くしている手腕をさぐってみた。

ウエスタン・リーグのペナントレースは、1軍よりひと足先の15日から開幕(阪神は19日)した。幸い阪神は鳴尾浜で連勝スタート。投で秋山、才木が。打では江越が一応の活躍はしたが、1軍がらみで戦力を見当するとまだまだ手さぐりだ。果たして福留、糸井、鳥谷のベテランがどんなスタートを切るか。また、マルテ、ナバーロ両外国人のバットは。そして、大山、高山、中谷、北條、糸原、上本、陽川といった中堅どころのできと近本、木浪のルーキーが出足から波に乗れるか。昨年、最下位に甘んじた弱点の打線は解消されていない。現状は想定内か、それとも想定外か。ファームから見るとつかみどころがない。平田監督、頭の痛いところ。

ところが同監督、昨年まで1軍のチーフ兼守備走塁コーチを務めていた。チームの戦力を把握しているのは強みだ。鳴尾浜球場での開幕戦、初戦は降雨で中止となったが2、3戦目は8対4、12対1の連勝。長打あり、タイムリーありの活発な打線にも満足感はない。2試合で3発を放った江越については「ちょっと変わってきましたかね。でも、彼ら1軍を経験している連中が、もっと危機感を持ってやってほしいね」とまだまだ不満の様子。陽川、板山らの名前をあげていたが、オープン戦でいま話題をさらっているのは近本、木浪の両ルーキー。新人の活躍は立派だが、いちOBとして、よくよく考えてみると、これだけの中堅1軍経験者がいながら、新人が注目されているのはなぜか寂しいし、情けない。これは既存の選手が成長していない証しであり、もっと中堅どころが頑張らないとチームの活性化はむずかしい。

60才。頭ごなしに選手を叱咤激励するいつもの平田発言はかげを潜めた。かつては“パワハラ発言?”が次から次へと飛び出した人。我々は見聞きしても、実際に体験してきて極あたり前の内容。不格好な試合をしたあとの「お前ら、俺が”もういい”と言うまで走っとけ!」と言ったまま長時間知らんぷり…もよくあったケース。この時は熱中症になった選手がいたらしいが、同監督、自分達はこうしてメンタル面を鍛えてきたし、育った年代だ。やっていることに間違いはないが、もう、今の若手には通用しない。選手がついてこない。それでもなおかつ平田流を貫こうとするなら指導者失格。「俺も体験してきましたからね」。3度目、時代の流れを感じとっている。

変わった。頭ごなしの指導者から、選手とのコミュニケーションを計り、理解ある指導者へと。本人いわく「アンダー、マネージメントですよ」さらりと言ってのけた。やはり前回2度の指揮官時代とは大きな違い。学生時代(明大)は厳しさで名高い故島岡監督の下で鍛え抜かれた。現役当時は弱音を吐かない選手だった。少々の痛みでヘコたれる選手ではなかった。首脳陣から指摘されても返ってくる言葉はきまって「大丈夫です」だった。当時の安藤監督がつけたニックネームは「大丈夫マン」血気盛んな若者は、高校、大学ではキャプテンとしてチームをまとめてきた。包容力と前向きな姿勢。負けん気の強い性格がキャプテンを任命された理由だと思うが、ポンポン飛び出すジョークは頭の回転がいい証拠。そして、気配りのできる男。毎朝練習前にバットスイングを義務づけている熱血漢。チームの活性化を期待したい。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)

平田勝男コーチ(右)の指導を受ける大山悠輔(2018年9月26日撮影)
平田勝男コーチ(右)の指導を受ける大山悠輔(2018年9月26日撮影)