阪神キャンプ視察に来た江夏豊氏(右)にあいさつする藤川球児(撮影・奥田泰也)
阪神キャンプ視察に来た江夏豊氏(右)にあいさつする藤川球児(撮影・奥田泰也)

球児は異常体質? 阪神、広島などで活躍した球界のレジェンド・江夏豊氏(70)が15日、阪神の沖縄・宜野座キャンプを訪れた。キャンプ訪問の指定席であるブルペン背後に陣取ると今季、抑え復活を狙う藤川球児投手(38)の投球に熱視線を送った。その口から出た言葉は「あいつは異常体質」。編集委員・高原寿夫がその意味を問い掛けた。

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お世辞を口にしない「レジェンド」が言うから意味がある。宜野座キャンプのブルペンを訪れ、例のサングラス姿で視察した江夏。視線の先には39歳を迎える今季、クローザー復活を目指す藤川球児の姿があった。藤川、どうでしたか? 虎番記者たちの問い掛けに独特の表現を使った。

「あいつ…。異常体質やな…」。

異常体質って。おどろおどろしいモノ言いには江夏ならではの称賛が隠されていた。

「ボールが若いな。年々、若返ってるんじゃないか。異常体質やな。抑え挑戦なんてたいしたもの。体力づくり、精神的なタフさ、それを養っていかないとね。本人がどれだけ気を引き締めてやれるか、だな」

自身、優勝請負人として数々の球団を渡り歩いただけに“抑え投手”の意味は誰よりも知る。

「球児のデキによって阪神の順位が変わってくるだろうし。7、8、9回の展開で逃げ切れるかが大きく左右する。元々、力はある投手。この何年かセットアッパーやったり、悔しい部分もあったと思う。それも心に秘めて球を投げてるんじゃないか。4番、エース、抑え、これは日本人がやるべきことだと俺は思っているしな」

自身の野球生活を振り返るとき江夏は「楽しかったのは広島時代やな」と笑う。優勝も経験できたしな、と説明する。だが同時にもっとも気に掛けている球団を聞かれると、必ず、こう言う。

「そんなもん、決まっとるやろ」。青春をささげたタテジマ、阪神への愛着は人一倍、強い。だからこそ最近の成績には不満が募る。

この日、指揮官・矢野燿大とあいさつを交わしたが、その点には「まあ、そんなに親しいわけじゃないしさ」と素っ気なかった。特に親交があるわけでもないそうで、それも“ならでは”の本音だろう。だが同時に阪神の指揮を執るものに対し、常に要望する思いは隠さなかった。

「タイガースの監督になったんだからな。今でこそ広島の時代だけど、関西は阪神だろ。それにセ・リーグ、日本のプロ野球は、やっぱり東は巨人、西は阪神で引っ張って…という形が一番盛り上がるんじゃないのか」

若いファンには「昭和の考え」と言われるかもしれない。だが、だからこその「レジェンド」でもある。強い巨人を倒して、リーグ制覇。平成ラストから新しい年号に移り変わるシーズンでも、江夏が夢見る球界、阪神のテーマは永遠だ。(敬称略)