夕陽丘(大阪)にリアル殿馬がいた? 18日に行われた大阪偕星学園との2回戦。9番右翼で出場した北野翔一外野手(1年)は野球とピアノの「二刀流」だ。右投げ右打ち、163センチの小柄姿は、人気野球漫画「ドカベン」に登場する殿馬一人に重なった。

 夕陽丘は95年から府立で唯一の「音楽科」を持つ。東京芸大など、芸術大学に多く卒業生を輩出する。北野はピアノ専攻で入学。森川栄一監督(59)も「音楽科が出来て20年の中で、今までなかったこと」と驚くように、反対する担任を説得し野球部に入部した。

 ピアノは3歳から、野球は小学4年の時に始めた。両立は簡単ではない。夕陽丘の音楽科は1/3が音楽の授業で、課題も多くある。北野は毎日放課後に1時間のピアノ練習をこなしてから、野球部の練習に参加。帰宅してからも3、4時間のピアノ練習を欠かさない。

 「自分の体を壊したとしても、頑張りたい」。中学3年時、0-3で敗れた最後の試合だった。北野は空振り三振ばかりに終わり「惨敗でした」と苦い記憶が残る。ピアノと野球を両立できなかったと感じ、「このまま野球をやめたら成長しない」と続ける決意をした。

 一見、正反対に見える野球とピアノ…。北野は「はたから見たら、ピアノはただ座ってるだけに見えるけど、ずっと弾くしんどさと、運動するしんどさは一緒」と笑う。野球の練習を続ける大変さを知っているからこそ、ピアノをずっと弾き続けることにも耐えられると言う。また「野球は友達と支え合って出来る」とピアノとは少し違う楽しさも感じている。

 得意な曲はベートーベンの「ピアノソナタ第3番」。入学試験の時にも弾いた曲だ。この日は1-15で6回コールド負け。自身も2打数無安打に終わったが「この経験を生かせるようにしたいです」。来年こそ快音を奏でるつもりだ。【磯綾乃】