野球手帳

コロナに奪われた伸びる期間 それでも球児は前へ

福岡大大濠のエース山下の視察に訪れたスカウト陣(撮影・菊川光一)
福岡大大濠のエース山下の視察に訪れたスカウト陣(撮影・菊川光一)

高校野球の現場で、新型コロナウイルスがもたらした「傷」に触れた。7月の週末は熱戦を取材するなか、あるNPB球団のスカウトが浮かない顔をした。地方球場の視察に訪れ、目の前でプレーしているプロ注目の選手の評価を聞いたときだ。「う~ん、そうだなあ…」と歯切れが悪い。続けて言う。「3年生はホントかわいそう。一番、伸びる時期に練習できてない。グッと伸びる子は6月くらいに来るからね」。高校球児の現状を物語っていた。

コロナ禍が秋のドラフト戦線を直撃するかもしれない。春の休校が長引き、活動停止中の空白は高校生が技量を磨く時間を奪った。有望株もセンスが光らなければ、スカウトは振り向いてくれない。かといってドラフトは待ってくれない。スカウトは「今年は進学を選ぶ高校生も多そうだね」とも予測する。8月下旬以降に「プロ志望高校生合同練習会」も開催されるが、見送って、大学や社会人でレベルアップを図り、次のチャンスに賭ける選手が現れても不思議ではない。

倉敷商との練習試合で力投する明石商のエース中森(撮影・酒井俊作)
倉敷商との練習試合で力投する明石商のエース中森(撮影・酒井俊作)

戦っている現場でも試行錯誤が続く。昨年の春夏甲子園4強の明石商(兵庫)は4月上旬から約2カ月間の休校をへて、代替大会に向けて練習試合を重ねる。7月19日は倉敷商と一戦。同点の9回裏無死一塁だ。サヨナラの走者を得点圏に進めたい場面だが、送りバント失敗…。ちぐはぐな攻めが尾を引き、引き分けに終わった。試合後、狭間善徳監督(56)にブランク期間の影響を問うと、渋い顔つきのまま、こう言った。

「この2カ月、どれだけ大きいか。ウチみたいに毎日正しく、コツコツ積み重ねてきたチームは、これができないのが一番、ダメージが大きい。それで勝ってきたチーム。引き出しをたくさん持って、どの引き出しを引いても作戦ができる状態にして戦っている。送りバントも、できない」

4年前の甲子園初勝利はサヨナラスクイズだった。バント、エンドランなど小技を駆使しながら、流れを呼び込む野球だ。あうんの呼吸は1日にしてならず。それでも来田涼斗主将(3年)は日焼けした顔で「チーム状態はじょじょに上がっている。細かいミスをなくしていきたい」と力を込め、失われた日々を埋めている。時計の針は、前にだけ進む。【酒井俊作】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

倉敷商との練習試合で1回裏に左翼線二塁打を放つ明石商・来田(撮影・酒井俊作)
倉敷商との練習試合で1回裏に左翼線二塁打を放つ明石商・来田(撮影・酒井俊作)

 野球をこよなく愛する日刊スポーツの記者が、その醍醐味、勝負の厳しさ、時には心が和むようなエピソードなど、さまざまな話題を届けます。

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