1月上旬の入寮日。ロッテのドラフト2位・中森俊介投手、オリックス同3位の来田涼斗外野手(ともに18=明石商)の元に明石商・狭間善徳監督(56)から同じ文言のメールが届いた。「毎日正しくコツコツ積み重ねることが大事。失敗しても命は取られないから。最善を尽くせ」。

コツコツ積み重ねる-。指揮官が指導の中で、選手たちに口酸っぱく言い続ける言葉だ。自身の経験、実績をこの4文字が映し出している。

同校に着任前は、高知・明徳義塾高で5年間コーチを務め、93年から13年間、明徳義塾中を監督として率いた。中学では全国優勝4回、準優勝2回。圧倒的な華やかさ。だが、高校から中学へ異動が決まった時は、心境は前向きではなかった。「高校野球の監督になりたかったのに。もう辞めようと思った」。辞めるか、続けるか。その岐路で支えられたのが、周囲の「今自分に与えられたことをやってみたらどうだ?」という言葉だった。「まずはこの明徳中を日本一にしてやろうと思った。したら6年で全中(全国中学校軟式野球大会)で4度優勝して。自分が与えられたこと、そこだけを見て毎日正しくコツコツと、生徒と向き合って必死になってやっていたら結果が出た。自分のやるべきことを、精いっぱい積み重ねて、最善を尽くせばこういう風になるんだという、だから今の自分がある」。

07年夏に明石商の監督に就任。16年春のセンバツでは甲子園初出場で8強。19年には春夏連続で4強入りし、これまでに多数の教え子をプロ野球界に送ってきた。「56年間の中で失敗と挫折の繰り返しだった。けど、今こういう風になれたと最後あいつらにも言った」。「あいつら」とは、冒頭の2人。結果をすぐには求めない。1軍初勝利、初安打。うれしい知らせは首を長くして待つことにする。【望月千草】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)