心に残る宣誓になった。

3月19日、甲子園。仙台育英(宮城)・島貫丞主将(3年)が「甲子園が戻ってきました」の宣誓で、2年ぶりの球児の春到来を告げた。「2年分の甲子園」という表現など、いい言葉を選んだと思う。

10年前の春。東日本大震災でセンバツ開催は危ぶまれていた。学校長の判断で東北の球児たちも甲子園に来られることになり、日本高野連は正式に開催を発表。選手宣誓は、創部1年目で甲子園出場を決めた創志学園(岡山)が担当することになった。

正直、少し戸惑った。東日本の復興を祈る大会と位置付けられたセンバツ。大人でも想像がつかない被災地の現状を、東日本から遠く離れた学校の新2年生たちがどう言葉にし、メッセージを発するのか。荷が重すぎるのでは、と思った。

だが開会式リハーサルで野山慎介主将の宣誓を聞いたとき、高校生の底力を甘く見ていた自分の浅はかさが恥ずかしくなった。「がんばろう、にっぽん!」。その呼びかけを聞いただけで、背筋が伸びた。見事な宣誓だった。

宣誓文の作成にあたり、野山主将は「先生やチームのみんなと考えた」と明かしていた。監督、野球部長、チームメートと言葉を選び、何度も練習して開会式に臨んだのだと思う。甲子園ならではの共同作業を終え、野山主将は開会式で自分の言葉として発信した。

野山主将の「がんばろう、にっぽん」も、島貫主将の「甲子園が戻ってきました」も、誰もが共感できる素直で易しい言葉。福島市出身で小学生のときに東日本大震災を経験した島貫主将の宣誓文には、野山主将の宣誓文にあった「感謝」の言葉が入っていた。そうやって球史はつながっていくのだ。テレビの前で見守る人々を含め、携わる者みんなの心に残るセンバツになれば、と思う。【遊軍=堀まどか】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)