9回裏阪神2死、巨人原監督(右)は5番手で登板したマシソン(左から2人目)を激励する(撮影・小沢裕)
9回裏阪神2死、巨人原監督(右)は5番手で登板したマシソン(左から2人目)を激励する(撮影・小沢裕)

巨人の指揮官・原辰徳に気持ちよく誕生日を迎えさせるな、という話だ。原は今月22日で61歳になる。最近の還暦超えは若々しい人が多いが原もその代表格だ。スッと背筋が伸び、やはりスターのオーラがある。

そんな原が率いる巨人が甲子園に乗り込んできた。堂々、首位快走中だ。迎え撃つ阪神は紆余(うよ)曲折を経て、2位だ。ゲーム差はあるが球宴休み前最後の3連戦、それでも「伝統の一戦」で「首位対2位」の対決を演出することができた。原と試合前、少しだけ話す機会があった。

監督が言った通りになってきましたか? そう声を掛けた。前回、話したのは5月29日の試合前だ。当時、阪神と巨人は貯金4、5を持って2位争いをしていた。そのとき原はこんな話をした。

「不動のメンバーで戦えるのがいいよね、阪神は。打線も投手もね。ウチは投手がまだ安定してないからね。まあ8月ごろにはしっかりしてくるように、と思っているんだけどね」

まだ8月にはなっていないが巨人がしっかりチーム力を上げてきた。そんな思いがあり、そういう話をしたのだ。そんなこちらに原はなんと答えたか。

「これからもう少し整ってきますよ。もう少しね」

まだ強くなるという自信を浮かべ、ニンマリ笑った。そしてこの試合。1点差の9回、原はマウンドのマシソンに駆け寄り、気合を入れた。逃げ切りに成功。この結果、再び2位阪神が5割になり、首位巨人がセ・リーグの貯金を独占する形になっている。

負けたが思わず力の入る試合だった。不調ながらエースの意地を見せる菅野智之に対し、阪神打線はジリジリ得点を重ねた。先発西勇輝も得意の粘投でビッグイニングを作らせなかった。3-4の得点はすべて1点ずつ入ったもの。こういうのも最近のプロ野球ではめずらしい。

勝てなかったが互角に戦える雰囲気は出てきたと思うのは甘いだろうか。もうひと踏ん張りだ、と思いたい。9日に勝てば最低でも勝率5割で球宴休みに入れる。

球宴明けの1週間後、22日は原の誕生日という話は書いた。このままなら余裕でハッピーバースデーだろう。阪神が連勝すれば流れも少しは変わるはず。少しは焦らせたいではないか。セ・リーグの灯を消さない使命は、いま、阪神に課せられている。(敬称略)

巨人に敗れた矢野監督(左)はファンにあいさつする(撮影・上田博志)
巨人に敗れた矢野監督(左)はファンにあいさつする(撮影・上田博志)