東京ドームで負け続けていた鬱憤(うっぷん)を晴らす大勝だ。今季はここで勝てないかも-。そう思ってしまうほどよくない流れが続いていたので、1つ勝てたことは、とりあえず、よかったと思う。

同じくそう思っている虎党には申し訳ないのだが巨人にとっては痛くもかゆくもない敗戦だろう。この3連戦、大事だったのは初戦だ。巨人はそこを取ったのだから大勢に影響はない。

「軽い体調不良」「軽い腰痛」で坂本勇人、岡本和真が2試合連続で欠場。もちろんその理由に偽りはないだろう。しかしここを負けられない試合ととらえていれば軽度の体調不良なら出てくる、とも思った。

敵将・原辰徳は目の前の阪神戦ではなく日本シリーズをにらんだ長期的視野に立っている。それは当然である。だけど、そういうときに1つだけ心配なことがある。それは“油断”だ。

2回、阪神の攻撃がよかった。2点リードで迎えた2死一、二塁。ここでサンズは中前に落ちるポテンヒットを放った。長打を警戒していたであろう巨人守備陣にとっては気の抜けるような適時打だったかもしれない。

これを処理した丸佳浩は二塁に返すときに軽~く送球し、ワンバウンドにしてしまった。これを遊撃手の吉川尚輝がはじいてしまう。その場面を一塁走者・糸原健斗は見逃さなかった。三進するのは2死からの安打なので当然として、このもたつきの間に一気に生還した。大きな4点目だ。

このミスでサンズも二進し、5番・大山悠輔の適時打につながった。名手・丸の軽いプレーから出た巨人守備陣の緩み。そこを突いた糸原の走塁。大味な試合の中、このプレーは光っていたと思う。

「ウチらしい野球ができた。つなぎ役がいるからこそ、そういう試合になる。これはタイガースの野球だと思う」。指揮官・矢野燿大もその場面をこう振り返って称賛した。

対照的に「こういうゲームは2度とやってはいけない」と言ったのは敵将・原である。その場面だけを指したのではないけれど油断があったことには立腹していることだろう。

巨人が11連敗、阪神が11連勝ならひっくり返るのだ。無論、そんなことはまず起こらない。それでも先のことは神様以外、分からないのも事実。そして神様がもっとも嫌うのは油断なのを原は知っているからだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)