おかしな話に聞こえるかもしれないが、試合中、感動を覚えてしまった。熊谷敬宥が途中出場したときだ。5回に渡辺諒の代走で出るとその裏から遊撃の守備につく。この回、大竹耕太郎はヘルナンデス、岡本和真に連続適時打を食らい、逆転を許していた。なお2死二塁の場面。坂本勇人の打球は遊撃へ飛んだ。
難しい当たりではなかったが強いゴロ。だが熊谷はこれをなんなくさばき、ランニングスローで一塁にピシッと刺した。これでチェンジ。それ以上、傷口を広げることはなかった。
負けたので、正直、大きな意味はないかもしれない。だが熊谷はこれが遊撃手としては今季初の守備機会だった。阪神はこの日が87試合。三塁はあったがここまで守る機会のなかった遊撃でキッチリプレーするのを見て「たいしたもんだ」と思ったのである。
思い出すのは2月の宜野座キャンプ。内野手の熊谷だが出場機会を求め、外野の練習もしていた。「なんでもやらないといけないですからね」と、あの端正なマスクで話していた。だが、なかなか出番は来ない。
現状、植田海と同様に代走から守備要員という位置づけの熊谷。だが試合に出るのがさらに難しくなったのは木浪聖也の骨折、離脱からだったと思う。小幡竜平を遊撃で使い、もしも何かあれば代わるのは熊谷だけ。その面でも早い段階で試合に出ることはなくなったのでは、と思う。
「もう、やるだけなので。打撃練習の打球を受けたり練習でやっているし、いつも通りできたかなと思います。ショートは投手を助けないといけないポジション。試合の入り方は難しかったですけど遊撃で出るのはそんなに難しくなかった。意外と落ち着いてできたと思います」
遊撃の難しさを示しながら、熊谷はそう話した。どうやってモチベーションを保っているのかな、と思うこともあったがいつもさわやかな表情であいさつするナイスガイだ。7回にはフェンスに身を乗り出してボールをつかむ美技でも存在感をアピールした。
試合後、指揮官・岡田彰布は小幡竜平の故障を明らかにした。これで木浪聖也の復帰も事実上、決定。同時にバックアップとして熊谷の重要度は増すはず。レギュラーだけで戦っているのではない。その意味でも勝ちたかったが、これも勝負。球宴前ラストの甲子園、広島戦で出直しだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




