「これで1発出れば、きょうは言うことなしでしょ」。サンテレビのゲストだった俳優・渡辺謙が言ったのは8回、佐藤輝明の打席前だ。そして佐藤輝は本当に右翼席へ放り込む。

言う方も打つ方もスターだ。これや! と浮かれたかったが長年の経験でこういうときに思うのは反対のこと。「こんな勝ち方をして大丈夫か」との思いだ。

開幕からの打撃不振。今季はどこも「投高打低」の傾向だが、それにしても打てない阪神。それでも先発、ブルペンとも豊富な投手陣の力で踏ん張ってきた。それが後半戦になって一気に向上してきたのである。

5試合連続2桁安打。そんなに打てるのなら最初から打てとも思うが、指揮官・岡田彰布はその要因として佐藤輝と大山悠輔の打順入れ替えや捕手を8番に下げたことを上げる。それは正解だろう。それでも思うのは、いわゆる“バイオリズム”も関係しているのではということだ。

一般人でも体調のいいとき、悪いときの波はある。仕事が乗るときと、そうでないときとか。言うまでもなく打者なら打てる時期、打てない時期だ。いまは全員が好調とも言える状況だが前半は反対だった。そうすると、またみんな打てなくなるのでは…という思いがわく。バラけてくれたらいいのに…という思いは岡田も感じていることだ。

「そんななあ。(誰かに)打つな言われへんしな。おーん。これはもう継続していくしかないよな。でもな、前半よくて、後半、悪なるよりはええよ」。真面目な表情でそう話した。

それでも阪神が期待できるのはやはり投手陣がいいことだ。この試合、大きかったのは「勝利の方程式」のブルペンが投げずにすんだこと。桐敷拓馬、石井大智、ゲラ、そして岩崎優の4人。この日と同じく9得点した前日7月31日も岩崎以外の3人が投げ、3人とも3連投となっていた。

さすがに4連投はあかんですか…という話をした前日、岡田は「いや、そら、どういうゲーム展開になるか分からへんからさ」と言い、使わないと明言はしなかった。100周年の記念試合は必勝が期待されるし、その面もあっただろう。

そこをこの日は前日、パッとしなかった岡留英貴、漆原大晟でしのいだ。岩貞祐太の1軍復帰も大きい。この流れは悪くないと思う。余計な心配は不要かもしれないが、今は打って、投手を休ませるときだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 ベンチで笑顔を見せる阪神岡田監督(撮影・足立雅史)
阪神対巨人 ベンチで笑顔を見せる阪神岡田監督(撮影・足立雅史)
阪神対巨人 巨人に勝利しビーズリーらナインを迎える岡田監督(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 巨人に勝利しビーズリーらナインを迎える岡田監督(撮影・加藤哉)