「勝負の神様」は実に皮肉である。そう感じられて仕方がないこの日の展開だった。ビハインドの状態から勝ちパターンの石井大智、さらに同点で桐敷拓馬を投入しながら勝てない。8回に出た大山悠輔の起死回生と呼ぶはずの同点弾も空砲になってしまった。
そんな中で、最大にうなってしまったのは島田海吏のプレーである。連覇へ向け、不利な状況にいる阪神。この流れを変えるには、これまで目立っていなかった選手が突然、活躍するなどイレギュラーな要素が必要だと思っている。
そこで、島田がまさかの出番を得るのだ。前日、このコラムで触れた前川右京がこの日の練習中に腰を痛めた様子。前日は不振からの復帰へ決意を口にしていたがこの日は試合にも出られなかった。その代わりに出たのが島田だ。
その島田が2回、無死一塁から右翼線を破る先制の適時二塁打を放つ。三塁はスライディングでオーバーランし、アウトになったが張り切っているのは、ありありと感じさせた。続く木浪聖也も二塁打だったので、三塁を欲張っていなければもう1点だったが、それは仕方ない。
残念なのは1-1の同点になっていた5回の守りだろう。無死一塁から岩田幸宏は左前へのライナーを放つ。これにダイレクトキャッチを狙って前に出た島田だったが急ブレーキ。その挙げ句、捕れずに後逸。無死三塁にしてしまう。その後、村上宗隆に勝ち越しの適時打が出た。大山のアーチでその1点は追いついたが、それで帳消しというわけにはいかない。
「中途半端でしたね。せっかくいいところに守っていたのにもったいない。シングルヒットにするか、思い切って前に出て体で止めるかという選択でしょうね。本人も反省していましたけれどね」。外野守備兼走塁コーチの筒井壮は悔しそうに話した。
繰り返すが誰かが流れを変える働きをしなければならない。クリーンアップを含めたレギュラー組はもちろん、控え選手の活躍で一気に変わるのはよくあることだ。だからこそ、こちらも、もったいないと思ってしまう。
残り試合は30試合を切った。重要なのは結果だけだ。ハッキリ言って広島を追い落とすのは困難な状況になったのは間違いない。それでも9月の熱い戦いを信じ、目の前の1試合を戦い続けるしかないのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




