先日、懐かしい男と話す機会があった。森田一成。35歳。阪神OBで今春からタイガースアカデミーのコーチに就任、子どもたちの指導に当たっている。07年の高校生ドラフト3巡目で岡山・関西高から入団。当時、シニアディレクターだった星野仙一から長打を期待されてのことだ。
実際に13年にはウエスタンリーグで本塁打、打点の2冠に輝いたものの1軍では思うような成績は残せず、14年限りで引退。通算本塁打は1本だけだった。その後、会社員生活などを経て現職についている。その森田が感慨深そうに言ったのはこういうことだった。
「いまのチームで佐藤(輝明)くんは、なんていうか、スターですよね。どこがどうということではないけれど雰囲気がある。オーラがあるし、スターというのはああいう選手のことを言うんですね…」
こちらも常々、同じ印象を持っているのだがスターを目指し、夢破れた男が言うのだから説得力がある。その佐藤輝は侍ジャパンのナイターが行われた前日6日からこの日、チームに合流。6回表、三塁の守備から出場した。育成・早川太貴が登板した7回には桑原将志の放ったライン際、鋭いゴロをバックハンドで処理。7回には山崎康晃から9球粘った後、中前に落とす安打を放ち、状態のよさを感じさせた。
その佐藤輝が1人、ガッツポーズをつくって喜んでいたシーンがある。3回裏、高寺望夢が2点適時打を放った場面。一塁ベース上でコーチの筒井壮と話す高寺に向かい、右手を突き上げていたのだ。
試合後。その理由を聞こうと佐藤輝の取材の輪に加わっているとき、高寺が脇を通った。すると佐藤輝は「おい! もっと喜べよ! ヒット打ったときに!」と大声。そしてこちらに向かって「そういうことです」と続けた。
2人は20年のドラフト同期。大卒1位の佐藤輝に対し、高寺は高卒7位だ。新指揮官・藤川球児はここ2年間、出番がなかった高寺を2月の宜野座キャンプで「キャンプMVP」に選ぶなど期待している。
マルチプレーヤーの高寺は試合に出るなら三塁の可能性もあり、佐藤輝にとってライバルになるかもしれない。それでも「みんなで頑張ればいいと思います」(佐藤輝)。必死で戦う若手に声援も送る姿。プロ5年目、やはりスターの風格を感じさせるのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




