強い今季の阪神、セ・リーグ球団との対戦に限ればここまで勝利を収めていない球場は地方を含めて2つだけだった。

1つは5月13日のハードオフ新潟でDeNAと引き分けている。そしてもう1つが、この京セラドーム大阪だった。

開幕2カード目のDeNA戦が2敗1分け。そして前日8日は延長12回の末、ヤクルトの前に屈した。たかだか4試合ではあるけれど準本拠地という位置づけに加え、今季の強さから考えてもなんだか不思議な感じもしていたのである。

ここで脳裏に浮かぶのは指揮官・藤川球児が過去に発した“京セラ嫌い”発言だった。古い虎党なら覚えているかもしれないが、こんな話だ。現役時代の11年8月16日だからちょうど14年前。京セラドーム大阪での広島戦で1-1の9回に登板したが1死満塁に。さらに代打・前田智徳に右翼線二塁打を浴び、マウンドを榎田大樹に譲っている。

イニング途中で交代となったのは05年10月2日ヤクルト戦(神宮)以来。球児にとっては相当、屈辱だったのだろう。敗戦投手となった試合後にはこんなことを言ったのである。

「京セラドームで打たれているのは知っている。言っちゃいかんけど好きじゃない。京セラでは休ませてほしい。苦手だ」。指揮官となった現在は発言に気をつけているが、当時は率直にモノを言うので知られていた球児。苦手意識を隠さなかったのである。

その後はマウンドの改良などもあって、その意識も変わっていったようだが、指揮官となった今、その頃の思いが亡霊のように浮かび上がっていたりして…と勝手に思っていた。

敗戦となった前日に続き、この日も苦しい試合展開だった。5回までに9安打を放つが得点は2点止まり。先発デュプランティエも失策から先制されるなど、なんとなくイヤな流れだったのである。「連敗か」と思ったが終盤8回に満塁男・木浪聖也が得意の満塁機で押し出し四球を選ぶなどで勝ち越し、京セラドーム大阪での今季初勝利をマークした。

「選手たちとファンの方々とともに球場の雰囲気、ボルテージが上がってきて、一気に相手を押し込めたかな、と。チームとファンが一体となって勝利を呼び込んだ、そういうゲームになりましたね」。球児にすれば、ひょっとして今季もっともファンに感謝した試合になったかもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ヤクルト 8回裏阪神2死満塁、藤川監督(左)は代打木浪を告げる(撮影・宮崎幸一)
阪神対ヤクルト 8回裏阪神2死満塁、藤川監督(左)は代打木浪を告げる(撮影・宮崎幸一)