試合の流れを変えたのは森下翔太だ。延長10回に放ったサヨナラ弾は言うまでもない。だが阪神が劇的幕切れで勝利を得る“流れ”は森下自身が呼び込んだと言っても過言ではない。それは8回表にやってきた。
阪神1点ビハインド、2イニング目に突入した3番手・湯浅京己が連打を浴びる。3番・佐野恵太に中前打。さらに筒香嘉智に安打、それも二塁打を許した。これで無死二、三塁。突き放される最大のピンチだ。
ここでビッグプレーが出る。牧秀悟は右翼へのライナー。これを処理した森下が矢のような…と言うよりはゴウゴウと火を吹くロケットのようなノーバウンド送球を本塁へ返すのだ。代走に出ていた三走・神里和毅は動かなかった。
これで1死二、三塁に。湯浅は続く山本祐大三ゴロに切る。2死一、二塁と場面が変わり、しぶとい石上泰輝を打席に迎えたところで4番手にベテラン左腕・岩貞祐太を投入。これが成功し、この危機を無得点に抑えた。これで流れが変わらなければウソというシーンである。
「(DeNAは)ファーストステージで積極的な走塁を見せていたけれど、あそこは無死だったし、走ってこないかなとは思っていた。でも森下がどう考えていたかは別。あそこは1点でも取られたら終わりというところですから。だからあれは大正解です」
外野守備兼走塁コーチの筒井壮は森下のノーバン送球について、そう目を細めた。見るからに元気あふれる森下は普段からノーバウンドで投げがちという。
「頑張らなくていいところはキッチリやれ、バウンドさせて投げろということはいつも言っている。彼は常にそういうものを求めがちなんだけど。でも、あそこは違った」。筒井はそうも説明した。
5回裏から雨で47分の中断があった。思い出すのは17年、DeNAとCSファーストステージだ。同10月15日にあった第2戦は大雨の中での激戦となった。当時も主砲だった筒香は内角攻めに転倒、ドロドロになる場面も。
それに勝った後、当時25歳の筒香はこんなことを言った。「向こうも本気。こっちも本気。戦いなので遊びじゃない」。腹をくくったセリフに気合を感じたのである。そして今回。森下にはそれに負けない気迫があった。油断はできないけれど、もう間違いない。(敬称略)




